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【本】優しく切なく可笑しいフットボールエッセイ・・・近藤篤『木曜日のボール』

ロンドンオリンピックがついに開幕しましたね!

変にはしゃいで盛り上げようとするテレビ番組などには、正直ちょっとウンザリしますが(^^;  実際に選手たちの熱戦が始まると、ついテレビの前に釘付けになってしまいます。

私はサッカーが大好きなので(詳しくないけど)、開幕に先立って行なわれた男子サッカーのスペイン戦や、今夜の女子サッカーのスウェーデン戦は観ました。

男子のスペイン戦は、予想外の(と言ったら失礼ですけど)見事な勝利でしたね~!

実は私もこの試合は負けるだろうと思っていて、「すごい疲れてるし、1点先制されたら寝よう」と思ってたのですが、前半のプレー内容がよくて、おまけに先制までしちゃったもんだから、結局最後まで見るハメになりました(笑)

今日は「サッカーといえば」ということで、私が大好きなサッカー本を一冊紹介します。だいぶ昔の本で、残念ながら中古でしか買えない絶版本なんですけどね。

 

木曜日のボール
著者: 近藤 篤
出版社: 日本放送出版協会
(絶版、中古のみ入手可)

 

この本は「週刊サッカーマガジン」に連載されていた同名のフォトエッセイを、単行本化したものです。

私はこの本だ出た当時(10年以上前)、よくサッカーマガジンを買ってました。その中で一番楽しみにしていた記事は、当時大活躍だったナカタの動向でもなく、Jリーグの試合結果でもなくて、実はこの連載だったんです。マガジンを買ってくると、いつも見開き2ページのこのフォトエッセイを、一番最初に開いていました。珍しい読者だったと思います。

 

「木曜日のボール」は、カメラマンである著者・近藤氏が世界中を旅しながら撮った、サッカーボールとたわむれる人々の写真に、短いエッセイが添えられたものです。

でもコレ、スター選手の写真集やサッカーマニアのウンチクといったものではありません。

大のサッカー好きである近藤氏は、エジプト、トルコ、ポルトガル、パキスタン、竹富島と、世界中を渡り歩きながら「サッカーのある風景」を撮り続けました。

寒村でサッカーに興じる少年、レストランの売上の大半をひいきのチームに寄付するオヤジ、人が少なくて11人のチームが作れないと語る離島の高校生・・・さまざまな対象にカメラが向けられますが、そのほとんどがサッカーを楽しむごくフツーの人たちです。

近藤氏は、世界中のフットボールを愛する人たちの表情や風景を、飾らない視点で切り出して見せてくれます。それが、一緒に添えられたエッセイと一体となって、優しいような、切ないような、可笑しいような、なんともいえない感覚を呼びおこしてくれるんです。

エッセイは単なる写真の解説じゃなく、むしろ写真とあまり関係のない話の方が多いくらいです。外国の市場の写真が載ってるのに、なぜかいきなり小学校の担任の先生の話が始まったり(笑)

時にブラックな冗談も軽く交えながら、飾り立てずに自然な調子で書かれている点が心地よいです。一見武骨でニヒルに見えて、実はシャイで実直ないいヤツ・・・そんな感じの近藤氏の人柄が想像されます(まったく勝手な想像ですけど)

その中にも、サラリと深いことや、意外とイイことが書かれていて、「クスクス」笑ったあとになんだかしんみりと心に残るものが残ります。

私は今でもたまに、この10年以上前のフォトエッセイに手を伸ばすことがあります。読むたびに、ちょっぴりシアワセな気分がわきおこってきて、なぜだかムショーに人恋しくなってしまう。

「ああ、おれってやっぱりサッカーが好きだわ」と気づかせてくれる、忙しさの中で乾きかけた心をもぞもぞ動かしてくれる、素朴な感情を取り戻させてくれる・・・この本は私にとってそんな一冊。大事な存在です。

中古でしか手に入らないのがネックですが、サッカーに特別な興味がないエッセイ好きな人にもオススメです。

 

ちなみになぜタイトルが「木曜日の」ボールだと思います?

きっと深いワケがあるのかな~と思ってしまいますが、その理由は 「単に原稿の締め切りが木曜日だったから」

なんだか近藤氏らしいセンスだな~と思います^^

それにしても、最近、近藤氏の話を全然聞きません。本も出していないみたいだし、どうしてるのかなあ~

 

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