新米パパの小さな発見手帳

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水素の燃料電池車って、どれだけ有望なんだろうか? 素人の素朴な疑問

      2014/12/18

2014年12月15日にトヨタが水素式の燃料電池自動車『MIRAI』を発売します。

最近、いろんなニュースで取り上げられていましたね。世界で初めて一般販売される燃料電池車です。

私は燃料電池に関する仕事をしているわけじゃないですが、一人の技術屋として、話題のテクノロジーに関しては興味津々。

そこで今日のブログでは、燃料電池をまったく知らない方向けに、さほど知らない私が解説しちゃうという、実に身の程知らずな企画をお届けします(笑)

 

 

燃料電池って何?

私たちの身近な「電池」といえば、単1だとか単3だとかの乾電池ですよね。

ほかに身近な電池といえば、デジカメや携帯に乗っているバッテリーもそうです(ふつう、乾電池以外の充電可能な電池を、バッテリーと呼びます)

そういうふつうの電池に対して「燃料電池」というのは何かというと、燃料を燃やすことで電気を生み出す装置のことです。

特にいま現在実用化のメドが立っているのは、気体の水素を燃料として使った燃料電池ですので、単に「燃料電池」とだけ言った場合、ふつうは水素式のものを指します。

水素式の燃料電池は、乾電池やバッテリーのイメージからすると「電池」らしくない外見をしています。水素を詰め込んだタンクと、それを燃やして電気に変換する装置とがつながって箱の中に入っている感じで、電池というよりも装置という感じです^^

でも、電気を生みだすという意味で、立派な電池の仲間なんです。

ちなみに冒頭であげたトヨタの燃料電池車「MIRAI」は、燃料として積んだ水素をガソリンのように燃やしてエンジンをまわす・・・わけではなく、水素を使って電気を発電し、その電気で走るという一種の電気自動車になっています。

(水素を燃やして直接動力にすることは可能ですが、効率その他の点で課題が多く、今のところ本命技術ではないようです)

 

 

なぜそれほど燃料電池が注目されるのか

燃料電池は、「究極のエコエネルギー」「エネルギー問題解決の切り札」のような言い方でもてはやされることがよくあります。これはなぜでしょうか?

その大きな理由の1つは、水素を燃やしても排気ガスが出ないことです。石油や天然ガスを燃やすと、二酸化炭素などの温室効果ガスや、硫化ガスなどの大気汚染物質が排出されてしまいます。しかし水素を燃やした場合、出てくるのは基本的に水だけで、とってもクリーンです。

もう1つ、水素式の燃料電池が注目される理由は、身近な物質の中に水素原子を含んでいるものがたくさん存在することです。そこから水素だけを取り出すには工夫がいりますが、水(H2O)に電気を通す(電気分解)ことでも作れますし、工場の排ガスから作ったり、植物から作ったりもできるなど、さまざまな手段が考えられます。だから石油や天然ガスのように、水素の源が完全になくなるということはほぼ無いと言えます。

また、水素はいろいろな手段で生産できますから、少量ずつでもあちこちで水素を生産して、それを必要なところに運んでから発電するというエネルギー流通網を作れる可能性があります。

 

 

燃料電池を車に応用することのメリット

ここまでは主に燃料電池一般の話でしたが、車へ応用した場合に特有の嬉しさは何でしょうか。その理由はこんな感じです:

 

1.先ほど書いたとおり、排出するのが水だけであること。

自動車の排気ガスはむかしに比べて相当クリーンになってますが、それでも温室効果ガスや大気汚染物質の規制は厳しくなる一方。だから水しか出さないという燃料電池車は、自動車メーカーとしてはひじょーに嬉しいクルマなわけです。

 

2.燃料の充てん時間が短いこと。

電気自動車をまんたんに充電するには、急速充電で30分、ふつうの家庭用電源で数時間かかります。しばらく買い物している間に充電するなど、充電のタイミングに工夫が必要です。

これに対して燃料電池車の水素の補給は、通常のガソリンとあまり変わらない時間で終了します。給油(給水?)が速いんです。

 

3.航続距離が長いこと。

これも大きいメリットと言えるでしょう。MIRAIは水素満タンで走れる距離が最大620km。これに対して電気自動車だと300km以下です。(テスラモーターの電気自動車は500kmくらい走れるようですが)

 

こう書くといいことづくめに見えますが、本格的な普及にはまだまだ課題が残ります。

まずはやっぱり、コスト(価格)ですね。MIRAIは定価700万円(これでも現時点では原価より安い設定になっていると思います)、国の補助金で安くなっても500万円以上します。

そしてインフラの不足。現状、水素ステーションは全国にわずか十数か所だそうです。しかも実証試験用の公的なステーションがほとんどで、商用の水素ステーションは現時点で兵庫県尼崎市の1か所だけというすごさ!

初年度は国や地方自治体、関連企業への販売だけになるそうですが、それも無理ないですね。

こうした問題については、量産化が進めば当然ながら解決していくと思いますが、発売からしばらくの間は、購入に相当な勇気がいると思います^^

 

 

素人的に感じる問題点・・・ほんとに究極のエコカー?

コストやインフラの課題はありつつも、環境にはやさしそうな燃料電池車。誰が言い出したのか「究極のエコカー」なんていう表現もときどき耳にします。

では燃料電池車は、はたして本当に究極のエコカーなんでしょうか?

実は私はかなり疑わしく思っています。

 

私が燃料電池車の(というか燃料電池の)最大の課題だと感じているのは、価格やインフラなどではなく、水素をどう作るかということです。

さきほど、水素「原子」は身のまわりの多くの物質に含まれていて、いろいろな手段で気体の水素を取り出せる、と書きました。しかし、大量の水素をを安定して作れるかというと、別問題です。排ガスや生物(バイオマス)で作れる水素は、燃料電池車を爆発的に普及させるためには不足だと言わざるを得ません。

現時点で水素の供給方法として一番主流になりそうなのは、石油などの化石燃料から水素を抜き出す(改質)という方法です。

でもこれをやるんだったら結局は化石燃料を使ってしまうことになります。排ガスも出ますし、百年スパンで考えると化石燃料はなくなります。この方法は、いつかはダメになっちゃうってことです。

 

じゃあ永続的に水素を生産する方法は何かというと、おそらく水を電気分解して水素を作るという方法になってくると思います。

「あ、それなら太陽光や地熱、風力で発電した電気を水素に変換すりゃいいじゃん! めでたしめでたし!」・・・と言いたいところですが、

エネルギーを変換するときには必ずロス(損失)が発生します。

電気から水素へとエネルギーを変換する過程も、水素を燃やして電気に「戻す」ところでもそれなりのロスが出ます。

それだったら、「太陽光とかで発電した電気を、余計なことをしないでそのまま使えばいいやん!」ということにならないでしょうか?

確かに充電時間や航続距離については、いまの技術では電気自動車が不利です。ただ、本当に化石燃料が枯渇することになったら、充電に時間がかかってイヤだなあとか言ってられなくなるはずです。

限られた電気をそのまま最大限に効率的に使い倒すのがベストなように思えます。

 

というわけで、限られた情報から素人なりに考えたところ、究極のエコカーはやはり電気自動車ではないかと思うのですが、どうでしょうか。

私は「水素の燃料電池」自体がダメと思っているわけではありません。

工場の排ガスやバイオマスなど、水素の供給可能性が少しでもあるところからは最大限取り出して、それを一部の据え置き設備にかき集め、燃やして発電のために使うという道はあると思います。

ただ、まとまった台数の自動車に必要な水素を安定供給するには、あっと驚くほどの技術的ブレイクスルーがないと厳しいイメージを持っています。

 

 

なぜトヨタは燃料電池車を押すんでしょうか

もう1か月以上前ですが、経済紙の週刊ダイヤモンドで、自動車をはじめとした水組織燃料電池ビジネスについての特集が組まれました。

私はそれを買っておいたんですが、いまごろになってようやく目を通したんです(^^;

 

週刊ダイヤモンド 2014年10月25日号
特集:トヨタを本気にさせた水素革命の真実

 

最後に、この週刊ダイヤモンドの記事で興味深かったことを1つ書いておきます。

実は天下のトヨタは、電気自動車にあまり乗り気でないように見えます。日産や三菱自動車などが量産を開始した中で、いまだに量産車を正式に発表していません。むしろ、燃料電池車というきわめて先進的で難しそうな技術に力を注ぎ込んでいるように見えます。

これはなぜなんでしょうか? 電気自動車を売る気がないんでしょうか? 疑問ですよね。

1つの推測として、記事にはこんなことが書かれています。

電気の世界では、汎用部品を集めて組み立てるだけで、それなりの性能を出しやすいと言えます。ということは、日本メーカーが得意とする「すり合わせ技術」が活きる場面が少なくなるということです。結果として、電気自動車が主流になると、自動車業界の参入障壁が従来より低くなることが予想されます。

しかし燃料電池の場合、水素の高圧タンクの製造技術やガスの安全なコントロール技術など、簡単には真似できない技術、作れない部品が必要になります。トヨタが燃料電池車を電気自動車よりも先に売り出す背景には、そうした技術を推し進めて参入障壁を高く保とうという意図があるのではないか。

もちろん電気自動車より燃料電池車を押す理由はこれだけではないと思いますが、これは「なるほど」と納得させられる指摘です。

 

日本が国を挙げて推進する大型プロジェクトである燃料電池や水素エネルギーは、利権の温床になる危険性が大いにあると思います。そうすると一度走り出したあとにもしダメだとわかってもやめられないという、ありがちなパターンに陥るリスクがあるでしょう。

だからこそ、「水素社会到来! そこで日本が世界をリードしている! すばらしい!」という景気のいい宣伝文句にあおられず、冷静な目でこの技術が有効かどうかを見極めていくべきだと思います。

・・・ただ、いち技術者としては、新しい技術への挑戦の話を聴くだけでワクワクしてきます。私のネガティブ予想が外れて水素ベースの社会を日本がリードして作っていけることを願います(笑)

 

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