新米パパの小さな発見手帳

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ボーカロイド現象をポピュラー音楽史から解き明かす一冊: 『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』

      2014/12/11

ボカロ曲がカラオケでもこれほど人気だとは

11月30日(日)の日経新聞に、「若者 50年の足跡」というシリーズ企画が掲載されていました。

この回のテーマは「音楽」。その中に、興味深いデータがありました。

通信カラオケ大手の「JOYSOUND」の集計によると、

2013年に10代の若者が歌ったカラオケの曲の上位20位のうちなんと10曲、そして20代でも6曲が、音声合成ソフトによる いわゆる「ボカロ曲」

だったのだそうです!

いやあ、これには驚きました。まさかそこまで来ているとは!

 

一応、知らない方のために軽く説明すると、「ボカロ」つまり「ボーカロイド」というのは、もともとヤマハが2003年に開発した、音声合成によって歌声をコンピュータ上で生成する技術の名前でした。

後にこの技術を搭載した歌声を再現できる音楽ソフトや、それを歌っている(ことになっている)バーチャルなキャラクターを、広く「ボーカロイド」と呼ぶようになりました。

ボーカロイドのソフトとして一番有名なのは、2007年に発売された『初音ミク』。こうした分野に疎い人でも、一度は聞いたことがある名前だと思います。

 

私はネット上の「ボカロブーム」にはまったく乗っからずにここまで来ました。ただ、音楽好きでオタク的素質もあるので(笑)、初音ミクなどのブームを横目で見ながら、それなりに気にはしてきました。

そんな私は、「十代でカラオケベスト20に10曲食い込む」ほど浸透しているとは知りませんでした。ネットの中だけでの同人的な楽しみにとどまっていると思ってましたから。いやあ、驚きました。

 

 

『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』

というわけで、この機会に、前から気になっていたこんな本を読んでみました。

 

『初音ミクはなぜ世界を変えたのか』
著者: 柴那典
出版: 太田出版
2014年4月3日出版

 

この本は、実際にムーブメントの渦中に入らないとなかなかわからない「初音ミクブーム」「ボカロ現象」の内容とその背景を、ブームから少し距離をおいた人にも垣間見せてくれる、とても面白い一冊でした。

 

この本で著者は、1967年頃にアメリカ西海岸で起こったロックの一大ムーブメント、通称「サマー・オブ・ラブ」以来  脈々と続くポピュラー音楽の流れの中に、初音ミクのブームを位置づけるという非常に大胆な試みをしています・・・

 

テクノロジーの進化と文化の大衆化とともに、若者たちはそれぞれの時代に新しい「音楽の遊び場」を見つけていきました。

その象徴的な例が、ラブ&ピースを旗印にロックが燃え上がった1960年代末の「第一次サマー・オブ・ラブ」。そして電子音楽の発達を受けてクラブカルチャーやヒップホップが勃興した1980年代末の「第二次サマー・オブ・ラブ」でした。

そして2007年、インターネットという舞台を得て初音ミクが新しい音楽の遊び場を作り出した。

著名なプロデューサーやミュージシャンではなく、無数の無名のクリエイターがネット上で作品を発表し合い、評価し合い、アレンジ・パロディーを派生させていき、シーンを盛り上げていく現象。これは、「第三次サマー・オブ・ラブ」と言えるほどの大きな変化だったのではないか。

 

・・・そんな主張が、関係者への丹念な取材をもとに、説得力をもって展開されています。

この本を読んで、初音ミクブームというのは新しい音楽ジャンルの登場というより、ネットを舞台にした全員参加型のエンターテインメントの誕生ということなんだなあと感じました。

楽曲を聴いてるだけではブームの本質はわからないんだろうなと、改めて思いました(もちろん、楽曲だけ聴いて楽しんでもいいわけですけどね)

 

この本は、音楽が好きだったり、いまどきのネットの動向に興味があったりするけど、「初音ミクってなんでそんなに騒がれてんの?」という私みたいな人に、まさにぴったりだと思います。

初音ミクの可能性にアツい思いをのぞかせつつも、舞い上がることなく冷静に書かれている印象なので、オタクっぽい内輪ノリが苦手という人でも大丈夫です^^

ただ、初音ミクにまつわるホットなニュースや、話題の作品、ミュージシャン(ボカロP)を紹介する内容ではないので、そうした情報は別の本かネットをあたったほうがいいでしょう。

 

最後に、わたし個人的には「初音ミクが世界を変えた」とまで言えるかというと、まだだろうな~と思います。今のところ、アニメやゲームなどのオタク文化の文脈に依存する面が強くて、現象としての広がりがまだ小さいなあと。

その段階を超えて、本当の意味での「第三次サマー・オブ・ラブ」になるかどうか、楽しみではあります。

 

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