新米パパの小さな発見手帳

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華々しい起業記録・・・ではない! 血が噴き出るような生々しい青春記 : 『予備校なんてぶっ潰そうぜ。』

      2015/06/26

新年早々、強烈におもしろい本を読んでしまいました!

 

『予備校なんてぶっ潰そうぜ。』
著者: 花房孟胤
出版: 集英社
2014年4月25日初版

 

この本のおおよその内容は、表紙に書いてあります:

 

日本の大学受験における地理的・経済的な格差をなくすべく、無料の授業動画サイト「manavee(マナビー)」をたったひとりで立ち上げた東大生 花房孟胤の奮闘記

 

私は花房さんのことも manaveeというサービスのことも知らなかったんですが、たまたまAmazonのkindle本セールで見かけたとき、刺激的なタイトルに惹かれてつい買ってしまいました。

先ほど引用した表紙の文章を見て、「学生時代にすごいWebサービスを立ち上げた、やり手企業家のサクセスストーリーかな」と想像していたんですが、読んでみたらだいぶ趣が違いました。

とにかく生々しい! 痛々しいんです!

 

花房さんは漠然と「場所やお金の問題のために予備校のサービスを十分に受けられず、大学受験で苦労する子の役に立ちたい」という思いはあったものの

「何をゴールとするのか」、「どのような組織でやるのか」、「ビジネスにするのかどうか」などを決めないまま、感性や衝動に突き動かされるように活動をはじめます。

大学の授業に出ることをキッパリやめ、「動画をWebにアップして、高校生たちが無料で見られるページを作ろう」と決めて、人集めをはじめる花房さん。

彼は manavee の活動を広げていく中で、次々にいろいろな困難やトラブルに直面していくんですが、その描写が半端でなく具体的で生々しいんです。

 

たとえば、自身の中のドロドロした汚い感情(あえてそう表現させて頂きますが)や、周囲の人々への率直で辛辣な見解などが、オブラートをまとうことなく、あまりにストレートに書かれています。

「ここまで具体的なこと書いちゃって、本人はともかく周囲の人は気を悪くしないんだろうか」と余計な心配をしてしまうほどです。

たとえば、仕事が多くなって心の余裕がなくなっていた花房さんは、自分と違って大学の授業にきちんと出ながらその合間にmanaveeの活動に参加する仲間に対して、こんな思いを持ったそうです。

 

僕自身は一般的な道からは外れつつあって、この先どうなるかもわからない。そんな不安を背負いながら一生懸命考えてやっているのに、失敗すると周りからは責められるんだ。お前たちは、周りから適当に正論を言いながら、空いている時間にちょっと作業するだけじゃないか。

 

その仲間たちは、一銭のお金も出ない作業に好意で力を注いでくれている。それなのに、余裕のない花房さんは上のような苛立ちを抱き、また時にぶちまけずにはいられなかったのです。

これに対して、「花房はひどいヤツだ」と切って捨てるのは簡単です。しかし逃げ場のない状態で難局に立ち向かう人間は、孤独の中で七転八倒する中で、負の感情を他者へ向けてしまう瞬間があるんじゃないでしょうか。よほどの聖人君子でない限り。

世の中の成功者の本には、たいていうまくいった事や、後付けされたきれいなロジックしか書いていません。失敗談が書かれていたとしても、それは成功のスパイスとして印象的な一事件を抜き出したようなものがほとんどです。

この本では、そうした成功者の本から抜け落ちてしまう生身の人間の苦闘の痕跡が、クッキリと刻まれています。

私は、花房さんほどスケールの大きなことを成し遂げた経験がありませんが、新しい仕事を立ち上げるときに失敗を重ねて一人頭を抱えた経験があります。

また花房さんの、何かにつけ不器用で、自分の感情の整理もヘタで、自ら要らぬ人間関係のトラブルを招きがちなところなど、昔の私にそっくりだと勝手に感じてます(^^

なので、花房さんが描写する迷いや人との衝突、感情を理性でおさえられないときの自己嫌悪などには、心の底から共感を覚えました。

 

 

花房さんと仲間たちの努力の甲斐あって、manaveeはやがて大きな広がりを見せ、一定の成功をおさめます。

にも関わらず、本のラストの部分からは「やりたかったことを実現した!」という満足感はあまり伝わってきません。

むしろ、花房さんの諦めにも似た内省的な終わり方になっているのが印象的でした。

 

花房さんの文章はとても明晰でわかりやすく、おそらく相当にごちゃごちゃしていたであろう彼の考えや感情を、上手に整理して適格な言葉に落とし込んでいるなあと感じました。

ビジネスや新事業をするうえでの大きなヒントや気付きになりそうな言葉も、あちこちにちりばめられていますが、私はそうしたビジネス書としてよりも、むしろ一人の優秀で不器用な若者の、触れただけで血が噴き出るような生々しい苦闘と成長の物語として読みました。

おすすめの一冊です。

 

 

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