新米パパの小さな発見手帳

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はやぶさ2の打ち上げへの道のりも苦難の連続だった! 『小惑星探査機はやぶさ2の挑戦』 by 松浦晋也

      2015/01/11

2014年(去年)の12月3日、小惑星探査機「はやぶさ2」が打ち上げられたことは、覚えている方も多いんじゃないでしょうか。

打ち上げは見事に成功。その後、イオンエンジンの基本動作が正常であることも確認され、いまのところ大きなトラブルもなく宇宙空間を飛行しているようです。

今後、少なからずトラブルに見舞われると思いますが、初代「はやぶさ」の絶対絶命のピンチを乗り切った経験を活かして、ぜひともプロジェクトを成功させてほしいなと祈ってます。

 

実にタイムリーな一冊 はやぶさ2の技術解説の決定版

さて、大ブームとなった初代はやぶさに関しては、私も2冊くらい本を読んだのでそれなりにわかったつもりでいるんですが、「はやぶさ2」に関しては、実はほとんど何も知らないままでした。

生命のもとになる物質が残っているとされる小惑星を目指す点が初代と違う、ということはニュースなどでおぼろげに聞いていました。

でも、それ以上の具体的な技術面の特徴や、どんな意思決定で、どんな問題点を乗り越えながらプロジェクトが進められてきたか等については、情報を追いかけてきませんでした。

そんな私にうってつけの一冊を本屋で発見したので、読んでみました:

 

『小惑星探査機はやぶさ2の挑戦』
著者: 松浦晋也
出版社: 日経BP社
初版: 2014年12月19日

 

著者の松浦晋也氏は元日経の記者ですが、いまは独立して、テクニカルライターとして活躍している方です。

特に宇宙分野に関しては昔からライフワーク的に数多くの記事や本を書いていて、わかりやすさと情報の正確さには定評があります。

私も松浦氏の本は何冊も楽しんできましたし、twitterもフォローしてます^^

 

そんな松浦氏が、日経の技術者向け情報サイトに連載したはやぶさ2の解説記事をまとめて整理したのが、この本です。

本を開いてまず驚いたのは、12月19日に出たばかりのこの本のカラー口絵に、12月3日のはやぶさ2打ち上げの写真が掲載されていること^^

冒頭のまえがきにも、打ち上げ成功を受けてその日のうちに松浦氏が書いた所感が書かれています。いやあ、タイムリーに出版しようと、ずいぶんがんばったな~

 

本書では、前半の1/4くらいが松浦氏によるはやぶさ2プロジェクトの概要の解説、そして残りの部分がプロジェクトのキーマンとのインタビューになっています。

長年の取材で培った関係者との信頼関係もあってか、技術面からプロジェクト運営面まで、かなり踏み込んだ発言や情報を引き出すことに成功していて、おもしろいです。

もともと技術者向け情報サイトの記事だっただけあり、テクニカルな言葉や情報も遠慮なく出ているので、私のような「技術者ではあるけど宇宙科学はよく知らない」という読者にもっとも適した本だと思います。

技術にはそんなに知りたくないけどはやぶさ2の雰囲気だけ知りたい、という人には少しヘビーな内容かもしれませんが、ちゃんと読めばエンジニアでない人にも技術の意義や特徴・課題がわかるような説明になっていると思います。

はやぶさ2の技術や宇宙、小惑星などに関心のある人にはおすすめの一冊です。

 

後継プロジェクトがないと、技術が失われるかもしれない

この本で面白かったことはいろいろあるんですが、一番印象に残ったのは「技術の継承の重要さ」に関する記述です。

 

はやぶさ2には、小惑星をより上手に探査するための技術の開発と実証、太陽系の歴史や生命の起源の解明などのミッションがあります。

そのミッションの達成ももちろん重要ですが、初代はやぶさのプロジェクトマネジャーを務めた川口淳一郎教授によると、はやぶさ2をやる意義はそれだけではないと言います。

初代はやぶさで培った有形・無形の技術が、はやぶさ2のプロジェクトを行うことで、次の世代につないでいける。それが将来の日本の宇宙科学にとってとても大事なのだそうです。

 

科学衛星のプロジェクトは、計画段階から数えると10年、あるいはそれ以上の期間にわたる長期のプロジェクトになります。

そうなると、1人の研究者が一生のうちに担当できるプロジェクトの数は限られます。特に、主導的役割をもって関われるプロジェクトとなると、一生の間に1つか2つということになるでしょう。

すると、せっかく初代はやぶさのようなプロジェクトで大きな知見を得ても、後継のプロジェクトを次々に行っていかないと、その知見は失われてしまうのです。

大量生産する民生品ではなく、科学衛星のように一品物の装置を徹底したすりあわせで作り上げる場合、その技術やプロジェクト運営のノウハウには、経験を通してでなければ身につかない、伝承できない要素というものが多分に存在します。

川口氏やはやぶさ2のプロジェクトメンバーの方たちは、苦労の末にようやく獲得できた世界最先端の知見がアッサリと失われてしまうことに、非常に大きな危機感を抱いているといる・・・そのことを私は今回初めて認識しました。

はやぶさ2に関しては、政治家からも、身内の研究者からも「はやぶさ2はやらなくていいんじゃないか」という意見が出て説得が難航、予算がつかない時期が長く続き、関係者は焦りと苛立ちを抱えていたそうです。

国の財政が厳しいのはわかりますが、はやぶさのような成果をあげても後継プロジェクトの予算がすんなり通らないという日本の現状には、ちょっとガッカリしてしまいます。

 

これまで2世代のはやぶさは、地球を離れた宇宙空間で衛星を高度にコントロールするという技術に挑戦しています。

この技術は、アメリカなどが火星探査を進めようとしている中で、今後とても重要な技術になってくると思います。

そうした技術で世界に存在感を示し、貢献するためにも、はやぶさ2のさらに次のプロジェクトもぜひとも続けていくべきだと個人的には思います。

ともあれ、はやぶさ2がワクワクするような発見を届けてくれることを楽しみに待ちたいと思います。ちなみに、はやぶさ2の小惑星到着は2018年、地球への期間は2020年末の予定だそうです。

 

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