新米パパの小さな発見手帳

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「フォルクスワーゲンが排ガス試験で不正」のニュースで気になること

      2015/09/25

フォルクスワーゲンへの無条件バッシングから感じる違和感

クルマに興味が無い方でも、このニュースを耳にしたかたは多いんじゃないでしょうか?

 

VWの排ガステスト不正問題、全世界に拡大…1100万台の可能性も (報道元:レスポンス Yahooサイトから引用)

 

今年の自動車販売台数で初めて世界首位に立つのではと言われ、絶好調のドイツの自動車メーカー・フォルクスワーゲンに関するニュースです。

同社のディーゼルエンジンを搭載したクルマに関して、アメリカで義務付けられている排ガス規制をクリアするための不正工作が行われ、アメリカ運輸当局が課徴金や刑事告発も含めて調査を始めたということです。

なんでも、2009年以降に販売されたTDIというターボディーゼルエンジンを搭載した車種すべてに関係する、大規模な問題なのだそうです。

一部報道では、最大で2兆円を超える罰金が課される可能性があるとしています。

このせいで、翌日の株式市場でフォルクスワーゲン株が20%も値を下げ、社長が引責辞任を表明するなど、かなりの懸念が広がっているようです。

 

ドイツの自動車メーカーといえば、質実剛健、まじめにモノづくりにまい進しているというイメージがあったので、かなり驚きました。

私は、仕事で多くの自動車メーカーさんとおつきあいさせて頂いてる関係で、このニュースにはものすごく興味があります。

 

この報道を受けて、たとえばヤフーのコメント欄やネットのまとめサイトなどでは、フォルクスワーゲンを批判するコメントが大爆発。

「世界一に目がくらんだな」

「もうかればいいと思っているのか。許せない」

「不正などもってのほか。信頼が地に落ちたな」

「トヨタなんかはライバルの思わぬ失策で内心ウハウハだな」

などなど。

 

私も「不正は許してはだめ。見つかったらしかるべきペナルティを受けるべし」と思います。そりゃそうです。

ただ、本当にフォルクスワーゲンがそこまで悪質なことをしたのかどうかは、もっと慎重に調査結果を見なくてはならないと思います。

だからマスコミやネットの「フォルクスワーゲンざまあみろ」と陽に暗に主張する様子を見ると、違和感を感じるわけです。

私はクルマの排ガス規制については素人ですが、以下でその違和感というか疑問について、言葉に表してみたいと思います。

 

試験への最適化をどこまで許すか、それが問題だ

今回フォルクスワーゲンが行った不正は、「排ガス試験のときだけ有害物質を規制値以下に抑えるエンジン制御を行い、それ以外の通常走行時は有害物質を規制値以上に出す(そのかわり燃費や走行性能が向上させる)制御をする」という内容でした。

この不正行為のやり方、大きく次の2つに分けられると思います:

 

  1. 手動切り替え
    • 排ガス試験直前に「試験対策モード」のようなものに手動で切り替えるか、あるいは排ガス試験用に差し出す車種についてのみ排ガス抑制プログラムを搭載する。
  2. 試験時に最適化した制御
    • 試験時も通常走行時もまったく同一の制御プログラムが動く。ただしクルマの動作状況(圧力・温度・速度など)を元に、プログラムが試験時であるか通常走行中であるかを自動的に判断する。試験時と判断された場合には、排ガスを抑える制御を行うようにする。

 

では、今回のケースはこのどちらに該当するのでしょうか?

先ほどリンクを張った記事に、不正の内容に関する記述があるので、引用してみます:

 

この問題は9月18日、米国EPA(環境保護庁)が発表。フォルクスワーゲングループが、米国の排出ガステストの際、違法なソフトウェアを使用。このソフトウェアはテスト時に、排出ガス浄化機能をフル稼働できる。しかし、このソフトウェアを用いると、通常の走行時の排出ガス浄化機能は、大幅に低下。排出ガス中の有害物質のひとつ、NOx(窒素酸化物)は、米国の排出ガス基準の10-40倍にも達するという。

(前出のリンク先から引用)

 

これによると、今回の問題は先ほどの2つのケースのうちの2に該当するようです。

ただ、この2のケースというのはきわめて微妙な問題を含むと思います。

 

1のケースは、おそらく誰もが明かな不正と判断するでしょう。だって、市場に出すのとは別のクルマを試験用に提出していたわけですから、詐欺と言っていいでしょう。

ところが2に関しては、試験の時だけ得するような仕込みをどこまでやるかによって、クロからシロまで非常に幅広いグラデーションが考えられます。

そもそも試験時に一番いいパフォーマンスになるように、クルマを調整するというのは当然のことです。そして、すべてのクルマメーカーは広い意味でのこうした最適化の手法を取り入れているはずです。ルールに従っている限り、それはとても合理的な戦略です。

だから今回の排ガスの件も、アメリカの法規で試験対策がどこまでが禁止されているか、そしてそれをフォルクスワーゲンがどれだけ破ったかがわからないと、事件の悪質性について判断できないと思います。

 

アメリカの法律には、2の行為を禁止するような明確な記述はあるんでしょうか?

ただ、この問題もそう単純ではありません。たとえばもし法律の記述が「試験時のみ動作するような機能を持たせることを禁止する」程度の粗い書き方であったとすると、まだまだ解釈に幅が残ってしまいます。

どのレベルからがアウトなのか? 試験モードと通常走行モードの2つを明確に分けて定義しているとNGなのか? モードが2つに明確に分かれるのではなく、どちらかというと試験時に排ガスが下がる傾向になるようにパラメータをなだらかに変化させる制御ならばOKなのか。だとするとその境目はどう考えるのか?  このへんを考えていくと、かなりグレーな領域に突入していきます。

下手をすると、当局の胸先三寸(考え方次第)っていう話にもなりかねません。「調子に乗ってるフォルクスワーゲンをここらでいじめとくか」というアメリカ当局の意思がはたらいて、厳しめに規制を運用するということも考えられます。うがった見方ですが、あり得ないとは言えません。おそらく、他の自動車メーカーも内心ヒヤヒヤものなんじゃないでしょうか。

 

そんなわけで少なくとも現時点では、フォルクスワーゲンを断罪することに疑問を感じます(既にフォルクスワーゲンは違法行為があったと認めて謝罪してるので、確かに違反があったんだと思いますけど)。マスコミなり自動車ジャーナリストの方なりに、何がどうNGだったのかを今後はっきり報道してもらいたいなと思います。

(思えば、似たような問題は世の中のすべての規制ごとに関して起こりえますね。現代の社会は、ルールや基準をがちがちに固めてその中で自由にやれ、という方向を目指していますが、OKとNGのグレーゾーンは絶対に残るでしょう。人や組織の都合やコネ、好き嫌いで絶えずゆれ動くグレーゾーンをどう読むかというのは、永遠の課題なんでしょうね)

 

 

 

(9月24日追記)

VWの違法行為の内容に関する、もう一歩突っ込んだ指摘が下記にありました:

<a href=”http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150924-00010000-carv-bus_all” target=_blank>5分でわかるVWの排ガス規制違反問題~清水和夫が真相に迫る~</a>

 

VWが指摘を受けたのは、「Defeat Device(ディフィートデバイス=無効化機能)」と呼ばれる違法プログラムを使用した疑惑だ。ディフィートデバイスは排出ガス規制に適合させるためのシステムを、試験の時だけ作動させ、ユーザーが実際に使う時には停止や作動を制限する(defeat:打ち負かす)プログラムで、欧米では反社会的行為として排出ガス規制の中で禁止が明文化されている。

 

法律に明確に禁止規定があることはわかりましたが、やはり違法かそうでないかの境目ははっきりしません。試験対策にあたっては、やはり「当局の意思(空気)を読む」ことが重要そうな気がします。

 

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