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何気ない日々の喜びを無骨に歌う名曲 『今の時代がいちばんいいよ』 by 前野健太

今日は、私とほぼ同世代のミュージシャン、前野健太の曲をご紹介します。

前野健太は一般に名が知られた人ではありませんが、もう20年近く音楽活動を続けていて、映画や舞台やテレビで俳優としても出演。

最近はEテレのテレビ番組にも出演しています。

そんな彼が今年の春にリリースした6枚目のアルバム『サクラ』収録の『今の時代がいちばんいいよ』です。

この曲は 2015 年に同名のCDブックに弾き語りで収録されていた曲を、アレンジして再録したものになっています。

 

 

サングラスにヒゲという一見こわもてな風貌からは想像できないほど、やさしい歌ですよね。

譜割りを考えずに 語りかけるように歌う前野の声、そして全編に漂う そこはかとなく切ない雰囲気が最高です。

 

前野健太は、彼の魅力である無骨で飾らない歌いかたで、「いまの時代がいちばんいいよ」とシンプルに歌います。

この言葉をストレートに言い切るのって、けっこう難しいことではないでしょうか。

先行きが見通しづらいいまの世の中、不安なムードに流されるのはいとも簡単です。

ニュースでも評論でも、「昔より経済が悪化している」「競争が激化している」「余裕が失われている」という言い回しにはこと欠きません。

だけど、よく見れば野には草花が芽吹き、そばにいてくれる人がいる。そうしたシンプルな喜びをあたりまえに味わえる、いまという時代を肯定する。

・・・なんてかっこいい あり方でしょうか!

 

この歌に限らず、何気ないものに改めてスポットライトを当てるような前野健太の歌を聴いてると、私はなんとなく年末を連想するんですよ。

あわただしい日々がいったん足を止める年末に、身の回りのあれこれを改めて新鮮な目線で見つめ直し、そして新しい年を待つ。

そんな年末の空気感にすごく近いものを彼の曲から感じるのって、私だけでしょうか。(・・・うーん、伝わりづらいかな ^^;)

 

最後になりますが、「今の時代・・・」が収録されたアルバム『サクラ』は、前野健太の過去の作品に比べてグッと人懐っこさが増し、アレンジは洗練されたという印象を受けました。

実際、若手実力 No.1 のポップ職人集団 cero の荒内佑、「恋するフォーチュンクッキー」等の編曲で有名な武藤星児らが、新時代の歌謡曲を作り上げるべくプロデュース・アレンジに参画しているようです。

どちらかというと、ツウ好みの孤高の歌師という印象だった前野健太ですが、本作で、多くの人々に届く普遍性を獲得したように思います。これからの前野健太の活躍が楽しみです。

 

『サクラ』 by 前野健太
レーベル: felicity
リリース日: 2018/4/25

 

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