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タイトルに釣られた感があるけど、面白い一冊でした 『ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い』 by 西寺郷太

投稿日:2018年12月26日 更新日:

買うだけ買って読んでいなかった本を、最近読みあさってます。

今日読み終わったのが、こちらの本です。

 

『ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い』
著者: 西寺郷太
出版: NHK新書
発売: 2015/8/8

 

著者の西寺郷太はノーナ・リーブスというバンドで活躍する現役のミュージシャンで、80年代の英米のポップミュージックに関する本を何冊も出してます。

彼が最初に出した本『新しいマイケル・ジャクソンの教科書』がとても面白かったのと、「呪い」という何やら恐ろしげなタイトルに興味を惹かれて、この本を手に取りました。

 

「We Are The World」という曲、みなさんは聴いたことがありますかね?

私は、中学のときに英語の授業のなかでこの曲を聴かされました。

日本では普段あまり耳にしない、崇高な理念と壮大な言葉がてんこ盛りの歌詞を見て、「なんかわからんけど、アメリカってすげえ!」と思ったのを覚えてます(笑)

We Are The World のミュージック・ビデオはこちら↓

 

 

1985年、アフリカの飢饉で苦しむ人々を救おうという趣旨のもと、当時のアメリカを代表する音楽界のビッグ・スターたちが集結しました。

彼らが同じスタジオで一同に会し、興奮と熱狂の中 ほぼ一晩で録音されたのが、「USA for Africa」というプロジェクト名義でリリースされたチャリティー・ソング「We Are The World」です。

その収録の一部始終は、この動画のようにカメラにおさめられ、楽曲とともに世界中に流されました。

本書は、そんな We Are The World の背景と内幕に関して、80年代洋楽をこよなく愛する西寺郷太が独自の視点から解説した一冊です。

 

この本のすごいところは、単に We Are The World というムーブメントだけを解説するのではなくて、100年以上におよぶアメリカのポピュラー・ミュージックの歴史の中に位置づけて解説している点です。

劇伴音楽 → ロックの誕生 → ヒット曲の分業・量産化 → ミュージシャンの自作曲の台頭 という音楽産業の流れを縦糸に、

音楽業界が黒人差別から次第に脱却していく過程を横糸にして、

非常にコンパクトに米英のポピュラー・ミュージックの流れを説明してくれています。

50年代~80年代の音楽に興味を持って、これから触れたいという人にはぴったりの「最初の一歩」になるんじゃないかと思います。

 

さて、本題の We Are The World の呪いについてです。

(ネタバレになるので、自分で読みたいという人はここらでお引き取りを・・・)

 

ミュージシャンによる大規模なチャリティー活動の先駆けとも言われる USA for Africa。

著者の西寺郷太は、崇高なこのプロジェクトの一体何を「呪い」と称しているんでしょうか?

本書の中にずばり、このように書かれています。

 

「〈ウィ・アー・ザ・ワールド〉に参加した現役世代のアーティストは、翌1986年までの2年間で自身の調子を最大に上げた後、軒並み失速する」  これこそが、僕、西寺郷太が提唱する仮説「ウィ・アー・ザ・ワールドの呪い」である。

 

なるほど。

このあとご丁寧にも、We Are The World でソロを取ったミュージシャン1人ひとりについて、1985年頃を境にヒット曲が出なくなるという事実が列挙されています。

確かに、著者の言うような一定の傾向があるようにも見えます。

ただ、読者としてはそれが一体なぜかという事が知りたい!

まさかどこかの魔女が本当に呪いをかけた、なんてわけ無いでしょうから(笑) 「呪い」のように見える現象にも、何らかの理由や背景があるはずです。

そこの解明を期待していたのですが、残念ながら、肝心のその点に関する著者の意見が 非常にわかりづらかったです。

というか、明確には書かれていません。

よくよく読むと、間接的に「これが呪いの原因だと言ってるのかな」と思われる記述はあります。

たとえば当時「Like A Virgin」でメガヒットを飛ばしていたマドンナが USA for Africa に参加していないことに関連して、こう書かれています。

 

マドンナは、〈ウィ・アー・ザ・ワールド〉のリリースされたCBS/ソニー系列と対立関係にあったワーナー系の看板アーティストであったため、そもそも誘われていなかった可能性もある。しかし、もしかするとマドンナは天性の勘で、この種のチャリティ企画の「あやうさ」を感じとっていたのかもしれない。  あまりにも「国民的」になり、素の姿を晒してしまうと、アーティストの持つスリルとダイナミズムは失われる。

 

著者がたびたび主張するところによると、USA for Africa の大きな特徴は、メイキングの様子が映像として世界中をかけめぐった事にあります。

チャリティー活動を映像を通して世間に見せつけてしまうことで、ミュージシャン自身に変に優等生的なイメージがついてしまって、活動の足かせになるのではないか。

また別のところでは、こうも書かれています。

 

「USA・フォー・アフリカ」は、夢のような異人種のスーパースターたちの共演が叶ってしまった膨満感と、崇高なチャリティが貫徹されたがゆえに訪れた虚脱感を、のちの音楽シーンにもたらしたのではないだろうか。

 

おそらくこのへんが、西寺郷太氏の考える「呪い」の原因なのでしょう。

 

でも個人的には、それが参加アーティストの失速していった主要因ではないと思います。

確かに We Are The World は史上稀に見るビッグ・プロジェクトだったと思いますが、その後の参加アーティストたちの在り方を左右したと考えるのは、さすがに買いかぶり過ぎではないかなあ、と (^^;

参加アーティストが軒並み We Are The World 後に売上を落としているのは、おそらく音楽ビジネスや音楽業界の構造的な変化に原因があるんじゃないかと、私には思えます。

たとえば、ミュージックビデオ普及の流れに乗れなかったこと(マイケルみたいにこの動きに乗れてた人もいますが)、ヒップホップ・電子音楽の台頭で従来型の音楽へのニーズが相対的に下がったこと、などの変化です。

それに加えて、単純に人気絶頂の人が その後何年も同じレベルの人気を保ち続けるのは至難の業である、という要素が 案外大きいんじゃないかと思ってますが、どうでしょうか(笑)

 

本書は、「呪い」の深い分析を期待すると肩透かしを食らう可能性があります。しかし、著者ならではの視点を交えたコンパクトな解説はとてもわかりやすいですし、何より愛情・思い入れにあふれた著者の語り口は、読んでいる方までワクワク楽しい気分にさせてくれます。

事実を緻密に列挙した解説本というより、音楽好きの友人の気軽な音楽談義という風情が魅力のこの一冊、80年代の洋楽に関心のある方におすすめします。

 

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