私の妻のお母さんは、よく子どもたちに絵本をプレゼントしてくれるんですが、この間も保育園の行事で会ったときに絵本を頂きました。
それがこちら:
『おしっこちょっぴりもれたろう』
著者 : ヨシタケシンスケ
出版社: PHP研究所
発売日: 2018/6/7
MOEという絵本の雑誌が、毎年発表している「MOE絵本屋さん大賞」で、2018年の第1位に選ばれて話題になったので、知っている方も多いかもしれません。
私はタイトルを見て、一時期はやった「うんこドリル」のような受け狙いの下ネタ絵本(笑)なのかなと思いました。
そのような要素は確かにあるんですが、さすがはヨシタケシンスケ、普通の話では終わりませんでした。
この本の主人公は、トイレのあとについパンツにおしっこをちょっぴり漏らしてしまう男の子です(小さい子には、よくあることですよね)
そしてそのことを、子どもながらに ちょっぴり悩んでいます。
わかってくれるのは、「おしっこ けっこうもれたろう」のお友だち1人だけ(笑)
それで、もれるのを直したいなあ、と思っています。
そんなもれたろう君は、パンツがかわくまで散歩しようと、近所に出かけます。
そして、どこかに自分と同じような人がいるんじゃないかと思って、街で困っていそうな人たちを見かけるたびに
「あなたも『もれたろう』ですか?」
という超ストレートな質問を投げかけていきます(笑)
結局その人たちは『もれたろう』ではないんですが、
実は 別のことで困ったり悩んだりしていた ということを、もれたろう君は知ります。
つまりこの本は、子どもが面白がるおしっこの話を入り口としながら、実は
「世の中にはいろんな人がいる」
「それは外から見ただけではわからないことがある」
という深いことを描いているんです。
これはすごいと思いました。
社会の中で暮らす私たちにとって「他人が気持ちや考えを想像する」ということは、とっても大切です。
でも幼稚園から小学校低学年くらいの子には、それが一体どういうことなのか、まだピンと来ないんじゃないでしょうか。
この本は、そんな子どもたちから他人への想像力や関心を引き出して、社会への窓を開いてくれる作品だと思いました。
同時に、「実は完璧な人なんていないんだよ。それでもいいんだよ」という大らかなメッセージもこめられていると感じます。
面白く読んで、ちょっぴり考えさせられて、最後はほっこりと優しい気持ちになる、すばらしい作品だと思いました。
作者のヨシタケシンスケさんは、話題の絵本をたくさん出していて、その作風は「哲学的」などと表現されることがあるそうです。
私も何年か前に記事に書いた彼の代表作『りんごかもしれない』も、書かれている内容はまさに哲学そのものなのに、子どもたちが何度も読みたがるほど魅力的な絵本でした。
今回の『もれたろう』も ヨシタケ節全開といった感じで、素朴な疑問を大事にすることで自然と世の中の本質に迫っていくような、秀逸なお話でした。
うちの子たち(7歳と4歳)くらいの年代のお子さんにおすすめの一冊です。プレゼントしてくれたおばあちゃんに、改めて感謝です。
P.S. 文春オンラインの こちらの作者インタビュー もおもしろいですよ。