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【本】外交とは何かが見える本・・・北野幸伯『プーチン 最後の聖戦』

ここ数年、私の中でロシアブームが来ています。

たとえば数年前にいきなりロシア語に手を出してみました。(かじったけど歯が立たなかった!)

音楽でもクラシックにはまって、特にロシアの作曲家をよく聴きました。

あとはソ連やロシア関係の歴史・社会情勢の本を読んだり。

どうしたことか、この歳になってドフトエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』とか、トルストイの『アンナ・カレーニナ』みたいな長編文学を読んだりもしました。

別に共産主義者になったわけじゃないんですが、欧米とは違ったロシアの価値観や、一種独特な「暗さ」をまとった文化に、なにか心惹かれるものがあったんですね。

あと、実は仕事でロシアの人とちょっと絡んだから、というのも理由だったりします。

 

そんなわけで、ネットでとても評判がいい、ロシア情勢に関する本があったので読んでみました。

ロシア在住のフリージャーナリスト・北野氏が、主宰するメルマガに書きためた記事を再編成した書籍です。

 

書名: プーチン 最後の聖戦
著者: 北野 幸伯
出版社: 集英社インターナショナル

この表紙、見てください。おっかない顔のロシア大統領プーチンのどアップです。

さらに「最後の聖戦」とか穏やかじゃないタイトルです。

サブタイトルに「ロシア最強リーダーが企むアメリカ崩壊シナリオとは?」とあります。

著者はロシア在住のフリーのジャーナリストだそうです。

そうなると、こんな思いが浮かんできます。

 

「ロシア大好きの著者が、プーチンのすごさを並べて、「ロシア万歳、アメリカ嫌い」を主張する偏った本何じゃないか。」

「または、あるかどうかもわからない陰謀論を並べ立てた、信頼できない怪しい本じゃないか。」

 

本を読む前の私の印象(というか妄想)は、だいたいそんな感じでした。

 

だけど、それは誤解でした。

この本は、ソ連崩壊後の混乱したロシアをプーチンがどのように立て直したのか、そしていかにアメリカの弱体化を狙ってきたのかについて、論説したものです。

書かれている内容は、日本のメディアではあまり報道されなかったり、強調されなかったりしたため、多くの日本人(私も含めて)が知らないことばかり。とにかくエキサイティングです。

ただ、そういう内容の本だけに、「勝手な陰謀論を並べたトンデモ本だ」という印象を与えかねませんが、その点は著者もお見通しです。

なにしろ、まえがきに いきなりこうあります。

 

「いまあなたの脳裏にどんな言葉が浮かんだか、あててみましょう。

  『これはトンデモ系の本?』 『変な陰謀論系?』

どうですか? ピタリと当たりましたか?」

 

はい、めっちゃ当たってます!(笑)

 

著者の北野氏は、書いてあることが単なる妄想ではなくて確からしいことだと示すため、新聞記事などの具体的な記録やデータを随所で引用しています。

論旨も明快で理路整然としていて、デタラメを書いている印象はまったく受けません。

 

この本は、プーチンの緻密にして大胆な「ロシア復活&アメリカ対抗戦略」を描きだしていますが、「プーチン万歳!」と主張するものではありません。

北野氏は、ロシアの過去20年間の政治・経済を題材に、「外交の現場とはこういうものだ!」「外交のニュースというのは、こう読み説くものだ」を日本の読者に示そうとしています。

その背景には、「日本は平和ボケしていて、このままではダメになるんじゃないか」という危機感があるようです。

この本を読めば、きっと海外の政治・経済ニュースを見る目が変わると思います。

元がメルマガなこともあって、文章もとても読みやすくわかりやすいです。それでいて内容は深い。一度読み始めたら止まらない。今年読んだ本の中でも1、2を争う面白さの一冊でした。

 

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