お盆前の仕事が終わりました。来週は一週間、じっくりお休みを取ります。嬉しいっす!
昨日はお盆前の最後の客先訪問に行ったんですが、そのとき乗ったタクシーの運転手さんが相当な話好きでした。
オリンピックや甲子園の話から始まりましたが、なぜか途中から話題が宇宙へ。
夏至と当時で太陽の沈む位置が地軸の傾き×2だけ変わるから・・・とか、何かと詳しい運ちゃん(笑) 元学者なのかな? それとも天文マニア?
その運ちゃんは、さらにこんな話題を振ってきました。
運転手 「いま、太陽の磁場が4極になってるらしいじゃないですか」
ネリノ 「え、そうなんですか? どこでそんなこと知ったんですか?」
運転手 「いや、ほら、Googleで調べてごらん、出てくるから。
でね、磁場が4極になると、その後必ずミニ氷河期が来るって
いう話ですよ。来年あたり寒くなるんじゃないですか?」
そんなバカな!
なんかあやしい話だなあ、それ!
というか、そもそも太陽の磁場が4極なんて話は全然知らなかったです。
一応、大学で宇宙の研究室に所属してたんですけど・・・(苦笑)
何やらとても気になる話なので、さっそくネットで検索して調べてみました。
実はこの話は、今年の4月に新聞なんかにも書かれるくらい話題になった話らしいです。
ネットで検索すると、「太陽:磁場が「4重極構造」に…地球、一時的に寒くなる?」なんていうタイトルの毎日新聞の記事が、確かにヒットしました。
理科学研究所もこの件についてわざわざプレスリリースを出しています。
また、一般社団法人サイエンス・メディア・センターが取材した、専門家による解説 も見つかりました。
一連の情報を、私なりにやさしく要約してみたいと思います。
地球と同じように、太陽も磁石の力を持っています。最近までは、太陽の北極側がS極、南極側がN極の1つの磁石のようになっていました。
ところで、太陽では一定の周期でS極がN極に、N極がS極になる、つまり太陽の磁石の向きが反転することが知られています。次の反転は2013年5月頃に起こると予想されていました。
南極側は、当初の予想どおり、いまもまだN極のままです。しかし北極のほうは、なぜだかわかりませんがフライングしてしまい、予想より1年以上早くS極からN極に変わりつつあることが、最近の観測からわかったのだそうです。
そうするとどうなるか。
近い将来に、北極も南極もN極という状態になると予測されます(あるいは記事が数カ月前なので、既にそうなってるかも)。
この場合、間の赤道付近がS極の役割を果たすことになります。つまり、太陽の北半球と南半球で、別々にS極とN極の組みが出現する、つまり太陽に磁石が2個存在するような状況になります。
これが、「磁場の4重極化」と呼ばれる状況なわけですが、これは太陽の振る舞いを細かく観測するようになった20世紀以降に観測されたことがない、特殊な状況です。
ですが、17世紀後半に地球が寒かった時期(マウンダー極小期)があり、そのときも太陽が同様の状態だったのではないかという説があり、だとすると今後、地球が寒冷な時期がくるという可能性も否定はできなそうです。
ということで、運ちゃんの話はトピックとしては正しいようでしたが、仮説レベルの話を確実な話のようにかなり話を盛ってしゃべってたようです^^
このニュースは、「研究者が自分の研究分野の魅力を一般の人にアピールするために、ドラマチックな仮説段階の話を紹介した」 という面があるんじゃないかと思います。
科学的な話題に慣れていない人の場合、かえって科学に対して無条件の信頼を持ってしまい、「予測」や「可能性」についての発言をいつの間にか「事実」「必ず起こること」と取り違えてしまうことがしばしばあると思います。発信する側の専門家も受け止める側も、事実か推測かを注意深く区別してコミュニケーションをしたいですね。
いずれにしろ、私は今のうちにホッカイロを買い溜めしとこう、などという気は特にありません。