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【Book】ジェームズ・バリー『ピーター・パン』

短い本を読みたいと思って「ジーキル博士とハイド氏」を読んだという話を、先日書きました。

今回も、ちょっと疲れ気味なので薄い本を読もう、ただし有名な作品がいいな、ということで、こんな本を読んでみました。

(以下、ネタバレを含みます)

 

『ピーター・パン』
著者:ジェームズ・バリー
訳者:本多顕彰
新潮文庫

 

そう、誰もが知ってるあの「ピーター・パン」の原作です。

私は、ネバーランドにでかけていって、フック船長が出てきて、ピーターパンがそれをやっつける!という冒険物語を期待して読みました。

でも実はこの物語には、ネバーランドもフック船長もまったく出てこなかったのです

読み終わってから調べてみてわかったんですが、ピーターパンの小説には『ケンジントン公園のピーター・パン』、そして『ピーター・パンとウェンディ』という2種類があるようなのです。

この新潮文庫のピーター・パンは『ケンジントン・・・』のほうの翻訳で、ネバーランドやフック船長が出てくるのは『・・・ウェンディ』のほうなのだそうです。いやあ、まんまと騙されちゃったなあ(笑)

 

でも、このピーターパンの物語にも、これはこれで独特の面白さがありました。

この小説によると、ピーター・パンは半分人間で、半分はそうでない存在です。

ピーターは普通の人間の子どもと同じように、お母さんから生まれました。しかし生後7日目に、ピーターは空を飛んで窓から外の世界と飛び出してしまいます。

そしてケンジントン公園(ロンドンにある実在の公園です)に住む妖精たちのもとへ行きます。彼は妖精ではないので、はじめは妖精たちから警戒されますが、やがて打ち解け、妖精たちの人気者になります。

しかしピーターはずっと、お母さんのところへ帰りたいと思っています。そしてある夜、静止する妖精たちを振り切って、ついにお母さんの待つ家へ帰ったのです。

なつかしい母親がベッドで寝ているのを見て、ピーターにはいとしい気持ちがこみあげます。しかしピーターには、公園の妖精たちのところでやり残したことがありました。それを終えてから必ず帰ります、そう誓って、ピーターはそのまま窓から家を出て公園へと戻ります。

しかし、その後ふたたびピーターが家へ戻ってきてみると・・・窓は固く閉じられていたのです・・・。

結局ピーターは、二度とお母さんと会うことができなくなりました。

母の元で愛されながら大人になることを放棄する代わりに、ピーターは生後7日の子どもの自由と無邪気さを永遠に持ちづづけながら、世界を飛び回り続けることになったのです。

このイメージが、続編の『ピーターパンとウェンディ』に(おそらく)描かれるネバーランドのピーター・パンにつながっていくのだと思います。

 

この物語では、子どもの目から見た自然の不思議さなどが、実にみずみずしく、ユーモアたっぷりに(時にイギリスらしいブラックジョークを交えて)描かれています。

でもその中に、なんともいえず切ないような感覚がにじみ出てきます。特に、人間でも妖精でもないピーターが、母親の元に帰れずに世界をさまようことになるくだりは、切ないですね。

子どものころの感性をちょっぴり思い出させてくれる、そんな作品でした。

 

いきなり話が変わるようですが

最近うちの奥さんが、太郎の歩き方がガニ股なのを、ちょっぴり気にしていました。

そんな中、小説の中でこんな表現を見つけました。

物語の冒頭、ケンジントン公園の中で、乳母車から下ろされて歩いている小さい子どもたちが描写されるんですが、それが 「ワニ脚の子たちが歩いている」 と表現されているんです。

ほう、ワニ脚!

こりゃまさに太郎のことじゃないか!

そうか、これってごく普通のことだから、気にする必要はないんだな!

そう、ピーター・パンは、私たちの 「ガニ股に対する不安」 を払拭してくれたのでした。

ありがとう、ピーター・パン!^^

 

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