皆さんは、WordPress(ワード・プレス)っていうものを知ってますか?
WordPressとは、ひとことで言えばブログを作成するためのソフトウェアです。いまご覧になっているこのブログ(http://nerino.net/) も、WordPressを使って作っているんですよ。
WordPressはいわゆるオープンソースのプログラムで、無料で使うことができ、世界中の技術者たちがボランティアで日々新機能の開発を進めています。
アメブロ、FC2ブログ、ココログなどのブログサービスは、とても簡単に使える反面、できることが限定されています。WordPressは自分でカスタマイズして使うプログラムなので、多少の知識と手間が必要になりますが、ユーザーの思い通りの機能・デザインのブログを作ることが可能です。
その開発スピードの速さ、機能の豊富さが評価され、WordPressはいまやブログ作成ツールの中で世界トップのシェアを持っています。
このWordPressの創始者の1人であるマット・マレンウェッグ(Matt Mallenweg)氏が今ちょうど日本に来ていて、今夜(6/6)新宿で講演会が開かれたんです。
私はWordPressを使ってはいるものの、Webの技術についてもビジネスについても「ど素人」。ちょっと場違いかなあと思いつつ、すごく興味をひかれて参加してきました。
前半の約45分はMattによる講演。若干30歳のMatt(私より若い)はカジュアルなスタイルで登場。プレゼン資料などは特に使わず、WordPressを開発したいきさつや、WordPressの今後に向けて考えていることを、ジョークや質問を交えながら語ってくれました。
WordPressのごくごく基本的な機能しか使っておらず、プログラミングなども全然しない私にとって、未知の技術用語がいろいろ飛び出してきて、「まだまだ知らない面白そうなことがあるんだ! もっとWebやプログラミングのことを勉強したい!」と久々に本気で思っちゃいました~。
またMattはとても気さくな人で、終始ポジティブなトーンで語っていて、聞いているだけでなぜか気持ちがワクワクしてきました。こういう人物だからこそ、大きなムーブメントをけん引し、成功することができているんでしょうね。
そして後半の45分は、MattへのQ&A。講演会の申し込みのときに募集した質問や、当日その場で出た質問にMattが答えていました。個人的には、講演そのものよりこっちの方が面白かった!^^
実はMattは、単にオープンソースのソフトを趣味で開発しているだけではなく、Automatticという企業の経営者でもあるんです。
Automatticは、WordPressを用いてアメブロと同じようにWeb上に無料ブログを作れるサービス WordPress.com をはじめとして、各種のWebアプリケーション・サービスを提供しています。まだ若干250名ほどの規模ですが、急成長をとげつつある企業だそうです。
単なるITギーク(マニア)というだけでなく、ビジネスの修羅場を数多く潜ってきたであろう経営者だけあって、言葉を適格に選んだ明快な受け答えは素晴らしいものがありました。
そんなMattへの質問で興味深かったものをいくつか挙げてみます(私の記憶を元にしてるので、内容は100%正確ではありませんが、大間違いはないと思います)
Q: 「オープンソース (技術の自由化・無料化)の理念と、経営者として利益を上げることとのバランスを取るうえで、何が難しいか?」
A: 「忙しくて寝る時間がなくなることかな(笑)
私も最初は、どこかの時点でオープンソースと企業利益のどちらかを選ばなくてはなくなるのではと心配していた。しかしAutomatticには、オープンソースへの情熱を共有する仲間が集まってくれ、そうした対立は問題になっていない。
ただ、投資家から利益に関して非常に強いプレッシャーがかかると、オープンソースと経営の両立が難しくなる可能性がある。私は利益を最重要視しない。もし両立しなくなった場合は、私は企業利益よりもオープンソースのコミュニティーのほうを選ぶ。だから、株式を上場するつもりもない。
Q: 「WordPress、CMS、さらにインターネットの未来についてどう考えるか?」
A: 「1つ言えるのは、このまま我々が何もしなければ、ネットはどんどんclosed(閉鎖的)でproprietary(私的)なものになってしまうということだ(※1)。それを望まない人は、自らアクションを取ってほしい」
「技術面で言うと、モバイルが最重要となる。レスポンシブ・デザイン(※2)、多言語対応が大事で、WordPressの開発でもそこを重視する考えだ。あと、JAVA Scriptを勉強しよう」※1 一部の強い企業がデータを囲い込む動きのことを言っているのだと思います。たとえばGoogle、Amazon、Facebookなどはその良い例です。初期のインターネットは情報のオープン化を最重要視してきましたが、最近はお互いに孤立したサブネットの集合体のようになりつつある、という指摘もあります。
※2 画面のサイズにあわせて最適な表示が行われるように、Webページをデザインすること。携帯、タブレット、パソコンはそれぞれ異なる画面サイズ・解像度を持つので、これは重要になります。
Q: 「若者へのテクノロジー教育について、あなたの経験からアドバイスは?」
A: 「私もむかしオープンソースに関わり始めたときは何もわからず、掲示板で質問をするだけだった。そのうち、以前人から教えてもらったのと同じ質問を見かけるようになったので、次第に回答をするようになった。
教えることこそ最高の学び。あなたが「自分は何も知らない」と思っていても、あなたよりも知識のない人は必ずいるもの」
「ちなみにプログラミングに関しては、codeacademyやドットインストールなどの無料で学べるサービスもあるので、どんどん利用したらいい。」
Q: 「起業するとき、共同創設者やサポーターを見つけるコツは?」
A: 「共同創設者を見つけるのは結婚と似ている。私は結婚してないけど(笑)、たぶん似てるはず。「健やかなるときも病めるときも・・・」と誓える人がいい。」
「雑誌などでは、成功した創業者の華々しいことしか書いていないが、実際は大変なことだらけ。悪いことがありそうなら、起こる前に起きたらどうするか、よく話し合っておくことだ。コミュニケーションが大事」
「あと、自分より頭のいい、優秀な人を雇うこと。そうすると学ぶことが多くて働くのが楽しくなります」
イベント全体を通じて、Mattがオープンソースの思想、そしてWordPressのコミュニティを、何より大事なものと考えていることが、よくわかりました。
講演の最後では、イベントのスタッフや、過去に何らかのかたちでWordPressに貢献した人たちに立ってもらって拍手を送るなど、彼のアツい思いが伝わってきました。
「WordPressは技術的には6か月で同じレベルのプログラムを書けるだろう。だけどこの素晴らしいコミュニティは、マネできない」という発言にはとても共感。
いま、私の勤務先でもそのような考え方で、海外の巨大企業が作っている強力な製品と対抗しようとしているので、「うんうん!」と思わずうなずきながら聞いてしまいました。
今回のイベント、普段の私が知らない世界に背伸びして飛び込んだ感じでしたが、臆せず行ってみて本当によかったなと思います。新しい世界をのぞいてみること、成功をおさめてる人の話を直に聞くことって、やっぱりワクワクしていいもんですね。
WordPress 、もっと使いこなしたくなってきた!