ソウルフル&コミカルなウルフルズはいまも健在
実は最近、複数のミュージシャンが特定のミュージシャンの曲をアレンジ/カバーしたアルバム、いわゆる「トリビュートアルバム」を聴くことにハマってます。
それで最近聴いた中でとっても良かったものがあります。
こちらです!
そう、「ウルフルズ」です! 90年代中盤に「ガッツだぜ!」などの大ヒットを飛ばした4人組でございます。
ヴォーカルのトータス松本のソウルフルでアツいヴォーカル、「男子学生の悪ふざけ」っぽい感じのちょっとユーモラスでアホな(注:ほめ言葉)曲と歌詞で、当時はかなりはやってましたね。
一見おふざけなようにも見えますが、ソウルやブルース、カントリーといったアメリカのルーツ・ミュージックの味わいが色濃く出た曲も多くて、音楽的な深さや面白さもあります。
途中に休止時期をはさみながらも、いまも現役で元気にヤッサヤッサと活動中のバンドです。
なんと意表をつく女性によるカバー曲集
さて、トータス松本のキャラクターもあって男っぽい印象も強いウルフルズですが、このアルバム、なんと全曲 女性アーティストによるカバーになっております。
メインのヴォーカルを担当するのは、Superfly、JUJU 、木村カエラなどのメジャーシーンの人たちから、片平里菜、阿部真央などの個性派の若手までバラエティー豊か。
さらにヴォーカルのみならず、バックで演奏するメンバーまで全部女性というこだわりようです。
いや~、意表をつかれました。すごくおもしろい企画じゃないですか! やっぱりカバーというのは意外な化学反応がないとつまらないですよ。
で、聴いてみたんですが、どの曲もカバーしているアーティストの個性がうまく発揮された素晴らしい作品に仕上がってました。
1曲目の Superfly による「ヤング ソウル ダイナマイト」は、ソウルフルなヴォーカルが特徴の彼女だけあって、自分自身の歌のように完璧にハマってます。
3曲目にUAによる「歌」は、実はわたくし原曲を知らないんですが、完全にUAのオリジナル曲のような土着的で呪術的な仕上がりでビックリです。原曲がどんななのか気になりました。
それで、私が特に気に入った曲の1つが、ハンバート・ハンバートによる「SUN SUN SUN'95」です。「サンサンサン おてんとさまさま・・・」のサビで有名なあの歌です。
トータスが声を張って歌う原曲は、夏のビーチではしゃぐ調子いい男たちという雰囲気でした。
一方こちらのカバーバージョンも夏の楽しい気分を最高に盛り上げてくれる演奏ですが、ヴォーカル佐野遊穂の力の抜けた清涼感のある歌声とカントリー調のサウンドがあいまって、原作とはかなり違ったタイプの、涼やかでどこかのんきな感じに仕上がっていて最高です! まさにハンバートにしかできないカバーです。
ただひたすら今を肯定する名曲『ええねん』
そしてもう1曲、すごくよかったのが、「あべま」こと阿部真央が熱唱する『ええねん』です。
彼女のパワフルな声の魅力がいかんなく発揮されていて、原曲に負けないエネルギーを放つ名演になっています。
2003年にリリースされたこの曲は、スゴイです。
何がスゴイかというと、ただひたすら物事を「それでええねん」「そのままでええねん」と肯定しまくるだけの歌なんです。
「好きにするのがええねん」
「後悔してもええねん」
「僕はお前がええねん」
「また始めたらええねん」
「情けなくてもええねん」
「にがい涙もええねん」
こんな感じでとにかく「ええねん」が連呼されます。
Jポップではお約束の「Aメロ・Bメロ・サビ」という構成もナシ。途中にブリッジっぽい所を除いてひたすら同じメロディーの繰り返し。「サビはなくてもええねん!」って感じでしょうか(笑)
私は、この曲が出た当時(2003年頃)は特に「この曲いい!」とは感じなかったんです。
だけどこの歳になって、阿部真央のカバーを聴いた私は不覚にも涙してしまいました(^^;
それなりにうまくいかない悔しい経験をしてきた今、「ええねん!」という言葉がまったく違って響いてきます。今の自分や周囲をもっと認めてあげようと歌うこの曲の力強さ、包容力の大きさにやられました。
今までウルフルズの曲で一番好きなのは「バンザイ! 好きでよかった」でしたが、このカバーで改めて聴いてから「ええねん」がトップに躍り出てしまいました(笑)
最後にこの『ええねん』のミュージック・ビデオをどうぞ! 阿部真央のカバーの映像があるとよかったんですが、ないようなのでウルフルズの原曲の映像です。アツいです!