クラシック

【DVD】冷静と情熱のあいだ・・・プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番」

クラシック音楽を好きになってからまだ2~3年にしかならない私ですが、猛烈に大好きな曲がいくつかあります。

特にいま現在、熱狂的にハマっている曲が、プロコフィエフの「ピアノ協奏曲第3番」です。

今日はこの曲を知らない人、クラシックにさして興味がない人向けに紹介してみますね。

 

そもそも「プロコフィエフ」と言われても、クラシック好き以外の人にはおそらく「誰それ?」という感じじゃないでしょうか。

音楽室の肖像画でもまず見かけない人ですよね。私もこの人を知ったのは、クラシックを聞き始めてからです。

プロコフィエフは19世紀末に生まれたロシアの人です(名前からしていかにもロシア人って感じです)。

20世紀前半に、ピアニストとして、また作曲家として活躍しました。クラシックというより、もうほとんど現代の音楽家ですね。

彼の祖国ロシアにとって、20世紀初頭はまさに激動の時代でした。1917年には革命が起こり、ロシアは世界初の社会主義国家に生まれ変わります。

この変化を嫌って海外へ逃げ出した文化人や芸術家がかなり多くいましたが、プロコフィエフもその1人です。彼はアメリカへ亡命(?)することに決め、1918年にロシアを出て、日本を経由してアメリカへ渡ったそうです。

私が大好きなピアノ協奏曲第3番は、ちょうど彼がロシアを離れる前後の激動の時期に書かれた作品で、当時の時代背景や激しい感情をしのばせるような、劇的な作品にしあがっています。

 

この曲に心底はまった私は、これまで10人以上のピアニスト&オケによる演奏を聞き比べてきました。

(まさかこの私が、同じ曲をこんなにたくさん聴き比べて喜ぶようになるとは、3年前は想像してませんでした。笑)

その中でも、私がベストと思うのは、You Tubeにアップされている、中国人ピアニスト ユジャ・ワンがソロをつとめるライブ演奏です。

一時期はそれこそ毎日のように、何度も何度も繰り返し再生して見ました。

ああ、この映像作品が売っていたらぜい欲しいもんだ・・・と思っていたところ、どうやらDVDやブルーレイでこの映像が売られていることを、つい最近知りました。

もっと正確に言うと、Youtubeの映像がDVDから無断でファイルに落としてアップしたものっぽいんですけど(苦笑)

それを知った私はさっそくDVDをAmazonで注文。おととい、ようやく手元に届いたのでした。

 

プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第3番」&マーラー「交響曲第1番『巨人』」
指揮: クラウディオ・アバド
演奏: Lucerne Festival Orchestra、ユジャ・ワン(ピアノ)

 

さて、この「ピアノ協奏曲第3番」は、モダンでスリリングな曲で、聴いていても古い感じがありません。オーケストレーションも洗練されていて、いまどきの映画やゲームのBGMに使われていてもおかしくないように思います。

では第1楽章を観てみましょう:

(本当にDVDからの無断転載ならマズいですが、画質の悪いお試し版ということで引用します)

 

 

まず冒頭の2分くらいがとにかくカッコイイ!

クラリネットがゆるやかなメロディーを奏で、やがてそれに呼応するかのようにオケの音がぶわーーっと立ち上がってきます。

この部分が、幻想的できらびやかで、うっとりします。まるで夜明けの朝日を眺めているかのような雰囲気があります。

やがてテンポアップ、弦楽器が小刻みな上昇する音の連なりを奏でたかと思うと、そこにピアノが鮮やかに切れ込んできます。ここの一連の流れ、何度聞いても爽快で胸がすきます。

 

さらに凄いのが、最後の第3楽章です。

 

 

プロコフィエフの音楽の特徴は、ロシアらしいロマンチックで抒情的な側面と、冷徹で機械的で現代的な側面とが共存している点にあります。

そうした、「冷静と情熱のあいだ」にあるプロコフィエフの魅力が存分に発揮されているのが、この最終楽章です。

冒頭で、2拍子を無理やり3拍子に押し込めたような不思議な主題が奏でられますが、これが曲中で次々と調やメロディーを変化させながら繰り返されます。

音と音の間を歯切れよくパキパキと区切るピアノ奏法や、テンポをゆらさずにキープする点が、プロコフィエフ独特の、メカニカルで現代的な雰囲気を作り出しています。この第3楽章を聞くと、機械じかけの人形たちが、夜中の舞踏会で不気味に踊り狂っているようなイメージがわいてきます。

中間でテンポがゆるやかになる部分では、一点して穏やかで抒情的なメロディーが胸を打ちます。しつこいですが、この二面性こそ、激動の時代を駆け抜けたプロコフィエフの真骨頂です。

映像の7分目以降のフィナーレの部分はまさに必見です。ユジャ・ワンのピアノとオケとの激しいかけあいが尋常じゃないです。

不協和音やギクシャクしたリズムを巧みにおりまぜながら、互いに煽り合うように盛りあがっていきます。理性と狂気が隣り合わせになっている感じというか・・・。ピアノが超高速でうねるように上昇・下降を繰り返す部分なんか、まさに鳥肌モノです!

いったいこの音楽はどこに着地するのかなと思わせられますが、最後は見事に明るいハ長調に戻って終結します。いやあ、かっこいい!

それにしてもユジャ・ワンの演奏は若々しくて激しくて、素晴らしいです。今後の大活躍が期待される演奏家です。

 

ということで、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番、どうだったでしょうか?

とてもリズム感の協調された刺激的な曲なので、普段ロックを聴いてるような人なんかにもいける曲かもしれません。

プログレ好きの人とかには、特にオススメできます!

 

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