音楽

故郷の川への想いを歌った名フォークソング 『Shenandoah(シェナンドー)』 を聴き比べてみる

今日は、アメリカで19世紀前半から歌われている伝承歌、『Shenandoah(シェナンドー)』を紹介します。

この歌を私が初めて聴いたのは、大好きな矢野顕子のアルバム『Love Is Here』の中ででした。

 

矢野顕子
『Love Is Here』
1993年6月2日リリース
エピック

2曲目に収録されているこの歌が、あまりにも素敵で、なつかしい気持ちを誘われて、何度も何度も聴いたものでした~

 

曲名の『Shenandoah』というのは、アメリカの東部、ヴァージニア州などを流れる川の名前です。

もともとこの歌は「舟歌」、つまり川で働く男たちの労働歌だったそうです。

 

Oh Shenandoah,  I long to see you,
ああ、シェナンドー あなたをもう一度この目で見たい

Away you rolling river.
うねり流れる川よ

Oh Shenandoah,  I long to see you
ああ、シェナンドー あなたに会いたい

Away, I'm bound away  'cross the wide Missouri.
私は広大なミズーリ川を渡って 行かなくちゃいけないんだ

 

この歌に出てくるもう1つの川・ミズーリ川は、アメリカ中部を流れる川です。つまり、シェナンドー川からはかなり離れているんです。

この歌の主人公は、おそらく故郷であるシェナンドー川から何らかの理由で離れ、巨大なミズーリ川までやって来た。そこを渡ると、さらに一層故郷の川から遠ざかってしまう。もう、元の土地には戻れないのではないか。

そんな状況で、ふるさとの川を懐かしむ想いが、切々と伝わってくる歌です。私は曲の雰囲気から、なんとなく アメリカ版『ふるさと』 みたいな印象を持っています。

ちなみにこの歌は、アメリカに入植した白人に追われ、西へ西へと追い立てられるように移住しなくてはならなかった、原住民のネイティブ・アメリカン(インディアン)たちの辛い想い歌った歌である、という説もあるようです。

 

こういう伝承歌やスタンダード曲は、実にいろいろな歌手がうたっていますが、You Tube のおかげで本当にたくさんのバージョンを聴き比べられるようになりました。

そのうちいくつかを紹介したいと思います。

 

まずはノルウェーの女性歌手、シセル(Sissel)のバージョン。

 

 

ちなみに後ろで味のある笛を聴かせるおじいちゃんは、アイルランドの音楽大使に認定されている伝統音楽バンド、チーフタンズ(The Chieftains)のリーダー、パディー・モローニです。

シセルは、映画『タイタニック』で、年老いたローズが昔を回想するシーンの歌を担当して話題になりましたが、そんなところからアイルランドのチーフタンズとの交流が始まったのかもしれません。

まさにアイルランドという感じのアレンジだと思います。

どうでもいい話ですが、シセルのお顔が、私の知り合いのおばさんにソックリで気味が悪いです (本当にどうでもいい話だな)

 

続いてこちらはジャズ・ピアニスト、キース・ジャレット(Keith Jarrett)のバージョン。

彼はジャズで有名な人ではありますが、実はかなり守備範囲の広いピアニストで、クラシックの曲なんかもいろいろ弾いてます。なにせ、「音楽の聖書」と評されることもあるガチガチの古典曲、バッハの『平均律クラヴィーア曲集』を全曲録音してるくらいですから。

このバージョンもジャズという感じはあまりしなくて、とてもクラシカルでシックなアレンジになってます。素敵です!

 

 

最後に、アメリカの「一人アカペラ」シンガー、ピーター・ホレンス(Peter Hollens)のバージョンです。

彼のスタイルはエンヤに似ていて、自分の声を何重にも重ねて、重厚で美しいハーモニーを形作ります。

これはもう、ゴスペル曲としか思えないですね! この曲のメロディーに潜む黒人的な要素をうまいことあぶり出した、面白いアレンジだと思います。

 

 

ただ、声の輪郭がちょっとカッチリクッキリし過ぎかなあ。個人的にはもう少し曖昧さやゆらぎがある音楽のほうが好みなんですけどね(笑)

まあ、そんな好みの話はともかくとして、素敵なアレンジです。

 

同じ曲をいろんな人のカバーで聴き比べるというのは、ほんとに面白いですね。また他の曲でやってみようと思います。

だけど、こういうことをしてると、いつまでも You Tube で遊んでしまうので怖いです!^^;

 

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