今週の音楽コーナーは、ブラジルのある音楽グループの曲『オラサオン』(oração。ポルトガル語で「祈り」の意味)のミュージックビデオを紹介します。
これはブラジル南部のパラナ州で活動する ア・バンダ・マイス・ボニータ・ダ・シダーヂ(a banda mais bonita da cidade) というグループの曲です。
あくまでローカルに活動しているグループのようですが、You Tubeにアップされたこの曲のミュージックビデオが、なんと1200万回もの再生回数を記録しているのです。
その映像がこちらです。
なんともいえずブラジルっぽいサウンドですね。ボサノバを思わせる弦楽器が主体の涼やかで穏やかなイントロからはじまって、最後は大勢が歌い演奏する楽しげなフィナーレへとつながっていきます。
このビデオ、曲も良いのですが、やはり何といっても映像が素晴らしいです。
最初に窓際にたたずむ1人の男性が写し出されます。フランス映画のような、ぼやっとした陰影が印象的なショットです。
そして彼がマイク片手に歌をうたいながら歩き出すと、カメラがそれを追いかけていきます。すると、行く先々で仲間が待ち受け、様々な楽器を手に、同じ曲のそれぞれのパートを演奏し、歌っています。そのたたずまいが何気なくて、気負わなくて、実にいい。
そして、当然のことなのですが、マイクが部屋から部屋へと移動していくにつれて、聴こえてくる楽器の種類や音の鳴っている方向、響き方などが変わっていくんですね。
一般的なライブ映像とも一味違う、日常生活を舞台にした一種のドキュメンタリーのような演出・・・
そのおかげで、スタジオでカッチリと作りこんだ音では決して出てこない、音楽が生活の中から自然に立ちあがってくる場の臨場感や、良い意味での緩さが感じられるのです。
これがこのビデオの最大の魅力だと、私は感じてます。
まるで観ているこちらの方まで、気のおけない仲間が醸し出すなんとも言えない良い雰囲気の空間に加えてもらえるかのような、そんな気がしてきます。
どうでしょう、楽しんでいただけました?
ちなみに私がこの映像を知ったのは、音楽評論家の高橋健太郎氏が中心となって発行している、電子書籍として出されているフリーの音楽雑誌「ERIS (エリス)」の第1号で取り上げられていたからでした。
編集長の高橋氏は自身の記事の中で、このミュージックビデオについてとても興味深い論評をしています。興味のある方はぜひこの雑誌、読んでみてはいかがでしょうか。アプリを入れれば普通のパソコンやスマホでも読めますよ(もちろん無料で)。
それにしてもこの電子雑誌「ERIS」は、すごく中身が濃くて読ませる内容なのに、広告らしい広告を入れずに無料で出しているなんて、大変なことだなあと思います。カンパしたいくらい(いや、ホント) ジャンルにこだわらないところも私好みだし、これからもいち音楽ファンとして応援していきたいメディアです。