10年以上前に世間を若干にぎわせ、長らく解散状態にあった とある男性デュオが、2012年に再結成。
今年に入って13年ぶりとなるアルバムを発表しました。
そう、伊藤多賀之&細根誠の2人組、ブリーフ&トランクス(ブリトラ)です!
ブリトラは1998年に1stシングルを発表。メジャーデビューに関してはあの「ゆず」の同期です。
見た目もギターを抱えたフォークデュオっぽいたたずまいなのですが、作風がかなり違ってます!^^
ブリトラの作る歌はパッと聞いたところ「変なの」とか「笑える」とかいう印象が強いです。なので、当時彼らの名前はなんとなく聞いたことがあっても、「ウケ狙いの色モノ」程度の印象しか持っていない人も多かったように思います。
だけどそれは彼らの一面でしかありません!
ブリトラは、誰もが経験したり思ったりしているんだけど、あまりに身近すぎて意識していないことを、誰よりも鋭く言葉に載せて歌ってくれます。
でもそれが笑いをまじえて飄々と歌われるので、全然説教くさくならないんですよね~
コミックソングっぽい歌詞の中に、ささやかな幸せとかちょっとした哀しみなんかがリアルに歌われていて、クスリと笑いながらも じーんとさせられてしまうという、そのあたりがブリトラのすごいところです。
10年以上前の当時、紋切り型の前向きな言葉をひたすら大声で歌う「ゆずっぽい人たち」がテレビや街頭にやたらとあふれましたが、そういう紋切表現いうのは聴いても伝わってくるものがあんまりないんですよね~、正直(笑)
ブリトラは変にええかっこしいじゃなくて、格好わるくておかしいところをちゃんとすくい上げている、そこが私は好きだったんです。
しかも一歩引いた視点でいろいろ茶化しているように見えて、実は鋭く人のキモチを歌ってる。ほんとに素晴らしい歌い手です。
そんな彼らのスマッシュヒット作で、私が大好きでならない一曲がコレ、石焼イモです。
「い~し や~き~イモ~~~」というあの旋律を使ったサビが印象的なので、聴いたことがある人も多いでしょう。
PV映像はふざけてるので、できれば音だけ聴いて欲しいんですけど(笑)、これがもう文句なしに最高! 何度聴いてもじわ~んと涙腺がゆるんでしまいます。
歌詞はこちら。ちなみに自作曲ばかりのブリトラには珍しく、作詞作曲はマリモラッコことSAICOというシンガーソングライターが担当してます。
若いカップルがなんともいい雰囲気になる。
けれどもそのたびに、「い~し や~き~イモ~~」の音がどこからともなく聞こえてきて雰囲気をぶち壊しにする(笑)
1番2番はそんな典型的なコミックソングらしい歌詞になってます。
ところが3番でこの印象がガラリと一変します。
ラブラブだった2人はそのまま愛を深めて、晴れて結婚!
人生の伴侶ができた。愛する子どもにも恵まれた。
しかし、長い月日を共に過ごしたはずの2人であるのに、生活のあれやこれやがある中でやがてすれ違いが生じ、その亀裂がどんどんと深まっていく・・・
すれ違い始めた僕達の すき間に吹く風
背中を向けたまま 会話も 笑いも 消えた僕らの部屋
そしてそのときに聞こえてきたのが、あの石焼イモの間の抜けた歌声。
かつては2人の邪魔をする存在でしかなかったこの歌なのに、いまはなぜか、2人の純粋に想い合ったころの気持ちを取り戻させてくれるメロディーとして響いてくる。
そうだ、もしかしたら2人は、もう一度やり直せるのかもしれない・・・
寄り添い歩いた道を また歩き出せたら
間違いじゃなかった 二人の出会いは
そう思えるように
1番、2番とおマヌケなシチュエーションを歌い、イモ屋の歌のチョッピリ間抜けな歌を引用したうえで、そのふざけた雰囲気を逆手にとった3番での切り返しがニクすぎます!
このとぼけた感じの 何でもないような歌が、2人にとってかけがえのない大切な意味を持つ。些細な物事に意味を見出すような視点のリアルさが素晴らしい。
そして、前向きな未来をほのめかしながらも、結末を描かずに余韻を残して歌は終わります。この、ありきたりの安易なハッピーエンドに流さないところも、作詞のマリモラッコさんの表現の妙ですね。
私は夫婦仲が良いほうだと思ってますが、それでも結婚して子どもができてという中で、お気楽な恋人どうしだった時は想像もしなかったような衝突や行き違いが露わになることが、何度かありました。
だからいまこの歌を改めて聴いてみると、この歌を知った10年以上前にはそこまでピンとこなかった、2人のすれ違い、そして再びより添い歩き出そうとする様子が、生生しいリアルさをもって迫ってきます。
『ブリトラ ゴールデン・ベスト』
by ブリーフ&トランクス
ダイプロ・エックス
2000年12月6日リリース
というわけで、秋だからでしょうか、今回はいつになくセンチな音楽紹介でした(笑)
ブリトラの13年ぶりのアルバムは今度聴くつもり。今後の2人の活動にも期待したいと思います。