私もいつの間にやら30代後半に突入しました。アラフォーですよ、アラフォー!
幸い、私の両親もかみさんの両親も健康で、介護などの必要はありません。
普段親しくしている同年代の友人・知人からも、介護で苦労しているという話をさほど聞きません(あまり話題にあげることがないので、知らないだけかも知りませんが)
だから私にとって「親の介護」とは、「いつ始まってもおかしくないと頭ではわかるけど、実態がイメージできない」話題でした。率直に言うと、いまだに どこか他人事な感じ がしていました。
そんな中、Amazon の電子書籍でこんなマンガがセールで安くなっていたので、たまたま買って読んでみました。
先日、某巨大書店に行ったときもこの本が平積みされていたから、けっこう売れているんだと思います。
『親を、どうする?』
著者: 小林裕美子、滝乃みわこ(原作協力)
出版社: 実業之日本社
初版: 2013年11月7日
これが、予想をはるかに超えて興味深い内容で、心にグッと突き刺さってくる作品でした!
読んだあと、今後は親ともっと真剣に向かい合っていかなくてはと、心から思い直しました。
この本は、高校時代の恩師の葬儀で久々に再会した3人のアラフォー女性が、両親・祖父母の介護や最期と向き合った経験について語り合う という物語になっています。
「おひとりさま」、「夫婦共働き」、「シングルマザー」と三者三様の立場で経験した介護のエピソードが、オムニバス形式で語られていきます。
この本のなにがすごいかというと、描かれているエピソードがとにかく生々しいことです。
一応フィクションではあるんですが、作者のお二人が多くの介護経験者に取材した話をもとに構成しているので、まるで密着ドキュメンタリーじゃないかと思えるほどリアルなストーリーが展開されます。
たとえば・・・
共働きだけど、家のことは妻にほぼ任せきりの夫。
義理の母親がぼけ初めていることを、一緒にいる時間がながい妻はそれに気づき、次第に苦労するようになっていく。
ところが、妻が夫に「お義母さん、ぼけが始まってると思うの。一度お医者さんに診てもらわない?」と相談しても、夫は聞く耳を持たない。
いわく、「あれくらいの歳になれば自然のことだよ」「おれと一緒にいるときは何ともない」「あんまりおふくろを悪くいうなよ」など・・・
本当によくありそうな話ですよね。
この物語では、最後は夫がぼけの事実を認識して全面協力するようになるのですが、その過程での妻の苦労やストレスが、ほんとに生々しく身に迫って伝わってきます。
「うちでこういうすれ違いを避けなくてはな」と強く思わされました。
このほかにも、各ストーリーに盛り込まれた小さなエピソード・会話の1つ1つが、「ありそう!」と思える、リアルなことばっかりなんです。
自分の肉体の衰えへのショックもあって、職員の人や、あまり顔を見せない家族に対して、あれこれと愚痴を言ってしまう祖父。
ガンの告知を受けたあと、熟年離婚した妻に「会いたくない」と娘に言いつつも、実はこっそりメールで連絡しようとする父・・・
ときおりクスッとなるエピソードもあるので、つらいことばかり描かれているわけではありませんが(特に3話目はなかなか素敵な話です)、絵柄のおだやかな雰囲気に反して シビアな現実も隠さずに描かれています。
この本を読んで、私にとって一番の新発見だったのは、原作の滝乃みわこさんがあとがきで書かれている次のことです:
介護経験者の方は皆、「介護そのものよりも、家族関係が一番大変だった」といいます。
弱っていく親の姿、育児と介護が重なるストレス、夫婦や兄弟姉妹とのいさかい
そのどれもが、他人にはなかなか話せない内容です。
これまでの私は、介護の時間的、金銭的、体力的な問題ばかりを意識していましたが、この本を読んで、人間関係にまつわる心理的苦労のほうに目が向くようになりました。
この本は、私のような、親の介護や老いがどういうことかイメージできていない30代から40代の人にとって、近い将来に起こることをかなりはっきりと教えてくれ、親との向き合い方を見直す絶好のきっかけを与えてくれる本だと思います。
また「老い」に直面した人間を、弱さ、強さ、可笑しさ、すべて含めて描き出した、一級品の物語でもあります。おすすめです。