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【書籍】「グローバル化」最終段階が始まった・・・倉本由香利「グローバル・エリートの時代」

今年に入って自分でブログを書くようになってから、他人のブログにもよく目を通すようになりました。

面白いブログがあると、とりあえずブックマークしたりしてます。

大部分は そのまま2度と見ないんですけど(笑)

 

今回紹介する書籍の著者、倉本氏は、東大大学院で物理を研究した後にアメリカでMBAを取り、外資系コンサル会社で活躍する若き経営コンサルタントです。

彼女もブログをやっているんですが、これがかなり濃い内容です。

最近の記事では、携帯電話ビジネスの戦場が完全にスマホに移り、競争のポイントがどう変わったか、またどの企業が利益を得ているか(Appleとサムスンが大半をかっさらっている、という結論ですが)を、具体的なデータを示して深く分析していて、とても興味深く読みました。

まさに自分と同年代の方ということもあって、その鋭い分析の切れ味にとても刺激を受けました。

その倉本氏が、6月に初めての書籍を出すということがわかりました。これは嫌でも期待してしまいます。私はわざわざ予約までいれて、即日ゲットしたのでした。

到着した本は、今どき珍しいほど、とことんシンプルな装丁の本でした。著者の質実剛健な人柄が想像されます。

グローバル・エリートの時代 ~個人が国家を超え、未来をつくる~
著者: 倉本由香利
出版: 講談社

さて、本の内容です。

「グローバル化」という言葉は耳にタコができるほど聞く言葉で、別に新しい言葉でもありませんよね。

ただ倉本氏は、世界のビジネスのグローバル化には3つの段階があり、今世紀に入ってからそのステージが第3段階に入っていると指摘します。

 

第一段階は、日本で言えば1970年代までで、国内で作ったものを海外で売る活動がメインの、「販売のグローバル化」です。

第二段階は2000年前後までで、販売だけでなく、モノ・サービスを生産・製造する活動拠点も海外におく、「生産のグローバル化」です。

そして第三段階にして最終段階は、研究開発や幹部社員の採用など、企業の競争力の源泉にあたる活動まで、世界中で行うようになる「組織のグローバル化」です。

 

このような変化は、先進国の経済成長があまり期待できなくなり、新興国がビジネスの主戦場になってきたことによります。

では、第三段階のグローバル化の時代に適応して成功を収めるために、企業は、そして個人はどうすべきか? それがこの本のテーマ。グローバル化の「いま」を大まかに俯瞰する、硬派な一冊です。

本の中から、面白いなと思ったことのごく一部をあげてみます。

 

・新興国向け製品は、単なるローエンド製品ではダメ。圧倒的に安く、かつそこそこ
高性能な製品が求められる。
また、文化やインフラ不足など、先進国とは異なる事情に応じた、技術の選択と
集中もカギとなる。(停電が多い→医療機は低精度でも携帯可能な電池式、等)

・研究開発をグローバル化する場合でも、環境の整った先進国では最先端の研究を
行ない、新興国では既存技術を新興国向け製品に適用する応用研究に集中する
などの分業が有効である。

・「国際化」は、国家間で政治的・経済的な連携が密になることを意味する。主体は
あくまで国家。
「グローバル化」は、個人や企業が世界とつながることで、必ずしも国家の存在を
前提としない。

 

私はグローバル化の最前線で活躍するモーレツ男ではありませんので(^^;)、実体験として「組織のグローバル化」の何たるかがわかっていません。

それでも、私の会社も徐々に海外へ出て行きつつあって、私自身も今後さらに海外とリンクした仕事をしたいと思っています。

この本は、私のようにグローバル化の最前線にはいない人が、いま現在進行している第三のグローバル化のイメージを、大まかに見渡すために役立つ一冊だと思います。

手軽なノウハウ書ではなく、硬派な論文という体裁なので、人を選ぶかもしれません。興味のある方は書店で中身を確認してから買うといいんじゃないかと思います。

 

本書で残念だったのは、とっても一般論的な記述が多いことです。サムスン電子等の事例もたびたび出てきますが、比較的よく知られた情報が多く目新しさに欠ける印象です。

なんかうまく言えませんが、「非常に賢そうな方だけれど、内容が具体性や発見に欠けるなあ」と感じてしまいました。

先ほど書いたブログの携帯市場分析の記事なんかは、具体的なデータを鋭く分析していて、素直に「すげーなー」と思ったんですけどね。

私と同年代のまだ若手のコンサルタントなので、次回作では著者独自の現場経験やデータ分析をふんだんに加えた内容を期待してます。

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