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デトロイトの財政破綻 & 『What's Going on』 by マーヴィン・ゲイ

衝撃的なニュースが飛び込んできました。

アメリカ北部、ミシガン州のデトロイト市が、連邦破産法9条の適用を申請、財政破綻したというニュースです。

米デトロイト市が破産法申請―繁栄した自動車の町、今は昔
(ウォール・ストリート・ジャーナルより)

デトロイトはかつて自動車を中心とする工業都市としてたいへん栄えた町です。アメリカの三大自動車メーカー、いわゆる「ビッグスリー」各社(GM、フォード、クライスラー)の本社や生産拠点が集中しています。自動車の街を意味するMotor Town、略して「モータウン(Motown)」という愛称で呼ばれたこともあります。

ですがそのデトロイトは、日本をはじめとする海外自動車メーカーとの競争激化、製造業からサービス業への産業構造シフトなど、時代の流れの中で20世紀後半から苦境に立たされました。

税収は減少、治安は悪化。ここ50年で人口はおよそ3分の1に減り、中心部(ダウンタウン)付近はスラム化しました。

かつての製造業は、厳しい労働環境で貧しい労働者が多くはたらく過酷な場でした。そうした場では、往々にして社会的に弱い立場に置かれた人々が働くことになりがちです。そのため、デトロイトを含むミシガン州には、古くから比較的多くの黒人が住んでいました。

しかしこの半世紀ほどのうちに、比較的裕福な白人たちは住環境の良い郊外に移り住み、あまり豊かでない黒人たちが中心部に残されるという「ドーナツ化現象」が起こりました。

このあたりは、エミネム主演の映画『8 Miles』でも描かれています。

 

 

さて、私が、海外のこのニュースに特別関心をひかれたのには、理由があるんです。

一番の理由は、デトロイトが私の行ったことのあるアメリカ本土の唯一の街だからです。

デトロイトへ行ったのは仕事のため。ダウンタウン中心部にあるコボ・ホールという場所(東京ビッグサイトとか幕張メッセみたいなとこ)で開かれたイベントに参加するのが、主な用事でした。

このときは一人っきりの出張だったのですが、事前にネットでデトロイトについて調べてみてビックリ。いかにデトロイトが危ない街かという情報がわんさか出てきて、不安にかられたのを覚えています。

 

「昼でも独り歩き厳禁」

「中心部も空きビルだらけ」

「全米凶悪犯罪率ワースト5の常連」

「駐車場から役所の建物までは小走りに急ぐようにしている」

「特に米国自動車業界の敵である日本人は注意」

 

などなど、行きたくなくなるような話ばかりが目に飛び込んできました(苦笑)

しかも困ったことに、私はあんまり強そうな体格をしていません。なもんで、不安はいやが応にも高まり、それこそビクビクしながら出張してきました。

事前にGoogle Street View で安全そうな道を調べたり、かなり念入りに情報を集めました(笑)

 

そのデトロイト出張時の写真を、いくつかアップしてみますね。

 

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長らく自動車販売台数 世界一の座をキープしてきた、GMの本社ビルとその周辺です。

この一帯だけは近代的でキレイな施設が集まっていて、治安もOKです。

だけど一歩このエリアを外れると雰囲気が変わります。

 

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レストランなどのある繁華街周辺(記憶がアイマイですが、たしかチャイナタウン付近)です。

レストランなどのお店がある場所なんですが、人があんまり歩いてません・・・。

 

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中心部には高層オフィスビルがたくさんあり、それぞれ少し古いけど風情のある雰囲気なんですが・・・平日のオフィス街なのに、なぜこんなに人がいないんだろう?

 

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こんな感じで軒並みテナントの抜けたビルが、あちこちにあります。「For Rent (賃貸中・空室あり)」の看板がたくさん目につきました。

日中から何をしているのかよくわからない人やホームレスの人が、街角で座っていたりしました。

 

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ダウンタウンには、「よくこんなにたくさん作ったな」と呆れるほど数多くの平面駐車場がありました。

どこもほぼガラガラに空いてます。

多分、採算の取れないビルをつぶしたはいいけど、空いた土地の使い道がなくてとりあえず駐車場にしている、という雰囲気がありあり。

 

 

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中心部を抜けると、ビルもおんぼろな建物ばかりになります。しかも建物はぱらぱらとしか無く、周囲は更地という環境です。

上の写真の所なんか、見渡す限り本当に誰も歩いてない・・・(^^;

一人で歩きたくない場所ですね。

 

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ダウンタウンを1周するモノレールが走っています。その駅の一つの写真です。

やっぱり誰もいません。降りた駅にも誰もいなかったです(無人改札で駅員もいない。ちと怖かった) まあ、モノレールに乗ったのは土曜の午前だったので、そのせいもあるのでしょうけど。

モノレールに乗ると、高いところからダウンタウン全体を見物できますが、か弱そうな日本人が一人で乗るのは避けた方がいいようです(乗ったけど)

車両はとってもキレイです。ただ、人通りのない廃墟みたいなエリアをこんなに近代的な車両が走る様子には、不思議なミスマッチ感があります。

 

というわけで、デトロイトのダウンタウンはやっぱり素敵とは言いがたい場所でした。

行く前にあれだけ怖がっていたわりにはあちこち歩いてしまいましたが、危ない目に遭わなかったのは幸いでした。

日本の名古屋も、トヨタがコケたりしたら、こんな雰囲気の街になっちゃうんでしょうか。想像するとちょっと怖いです。

あの寂れた街の風景を思うと、「ああ、あれでは破綻するのも無理ないよなあ」と思ってしまいます。

 

 

さて、出張の想い出について長々と書いてしまいましたが、私がデトロイトに関心を寄せる理由の話でしたね。

その理由は、私が行ったことがあるからという以外に、もう1つあります。

それは、モータウンレーベルの発祥の地であること!

モータウンというのは、ベリー・ゴーディー(ジュニア)という男が中心となってデトロイトで立ち上げた音楽レーベルです。

モータウンが送り出した音楽は、R&Bやソウルにルーツを置きつつ、それらのブラック・ミュージックがまとっていた酒やドラッグなどのイメージを転換、白人にも広く受け入れられるような上品でポップなアレンジ・演出によって、60年代から70年代に一世を風靡しました。

コーラスを多用し、独特の跳ねるようなリズムが印象的な音楽スタイルは、「モータウン・サウンド」という1つのジャンルにもなりました。

 

そのモータウンの楽曲の中で、私が大好きなのが、マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)の『ホワッツ・ゴーイン・オン(What's Going on)』です。

 

 

パッと聞いた感じ、ひたすらロマンチックに聴こえるこの曲ですが、実は歌詞はけっこうシリアスで、ベトナム戦争をはじめとするアメリカの社会問題に異議をなげかける、メッセージ・ソングになっています。

こうした社会的メッセージを色濃く持ったブラック・ミュージックは、当時としてはかなり珍しかったようです。そうしたメッセージ性の強い楽曲をレーベル側があまり良く思わず、このアルバムはマーヴィン・ゲイ自身がセルフ・プロデュースした作品でした。これも当時のモータウンのアーティストとしては異例のことでした。

だから、この曲はあまり典型的なモータウン・サウンドとは言えないと思います。でも、モータウン発の曲としては、私の1,2を争う大好きな曲です。

曲の誕生の背景や歌詞に関する難しい話はヌキにして、単純に曲だけ聴いても本当にいい曲です。

スウィートで、スムーズで、クールで。それでいて身体の奥底を心地よく揺さぶるグルーヴ。何度聴いても最高です!

この曲を収録した同名のアルバムは、超有名な歴史的名盤です。「肉感的で直情的なだけがブラック・ミュージックじゃないんだ」という新鮮な驚きを私に与えてくれた一枚として、とても想い出深いアルバムです。

 

 

以上、デトロイトと私の関係(?)について、思いつくままに書いてみました。

デトロイトは今、どうなっているんでしょうか? (まさに What's Going on !? )

そしてこの後はどうなっていくんでしょうか?

引き続きとても気になります。

 

 

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