うちの子が生まれてから、子ども向けの歌を耳にする機会が増えてきました。
私自身が小さい頃に聞いた歌を、大人になったいま改めて聞いてみると、「あれ、こんな歌詞だったんだ」とハッとさせられることもあります。
その中でも最近気になる歌があります。
『山口さんちのツトムくん』です。
みなみらんぼう作詞・作曲のこの曲は、たぶん聞いたことがない人はいないというほどメジャーな曲ですよね。ちなみに、歌詞はこちらで見られます。
この頃少し元気がない山口さんちのツトムくんのことを、近所に住んでいるお友達の女の子の視点から歌ったうたです。
1番と2番では、遊びに誘っても、おはようのあいさつをしても、さえない反応のツトムくんの様子がうたわれています。
いままで一緒に楽しく遊んでくれていたのに、最近なぜ元気がないんだろう?
その理由が、3番で一応歌われます。
それは ママが田舎へいってた からです。
私が子どものころは、「そっか、お母さんが何か用事があって数日留守にしていて、寂しかったんだね」 とサラリと理解していました^^
しかし大人の目で見ると・・・これは相当深い背景を想像することができますよね。
ママが子どもをおいてまで田舎へ行くなんて、単なる旅行ではないはずです。
出産があるので実家にしばらく戻っていたという考えが少し頭をよぎりましたが、赤ちゃんが生まれたという大ニュースがあったとしたら、3番の歌詞でまったく触れられないのはかなり不自然です。
するとやはり、夫婦ゲンカでしばらく家を出てしまっていた、そう考えるのが自然じゃないでしょうか。
そうすると、「大事にしていた三輪車 お庭で雨に濡れていた」という2番の歌詞の陰鬱なイメージや、3番の歌詞の「ちょっぴりすっぱい」イチゴの味も、納得いきます。
ああ、なかなかオトナの事情が含まれる歌なのだなあ・・・と、自分が大人になって初めて思ったのでした。
ところが、私よりさらにもう一歩深く、この歌を解釈されている記事を見つけました。以下、私なりの言葉で内容を紹介しましょう → こちら
このブログ主さんは、「山口さんちのツトムくん」という言い回しの妙におとなびた雰囲気に着目しています。
この歌は、ツトムくんの(おそらく)友達であるご近所の女の子の視点で歌われています。
しかしよく考えてみると、幼い女の子が自分の友だちについて話すとき「山口さんちのツトムくん」などという突き放した呼び方をするというのは、なんとも不自然です。
そこには、女の子の親や周辺の大人たちが「山口さんちのツトムくんって、この頃少し変じゃない?」という噂話をしている状況が透けて見えます。
つまりこの歌が描く情景は、もはや子どもどうしの無邪気な人間関係というレベルを越えて、大人まで含めた家どうしの関係にまで広がっているわけです。
ツトムくんちの状況が変だと陰で噂話をするばかりで、そこにコミット(関与)していかないご近所のドライな人間関係。
当時としては新しい家族形態であった核家族のもろさ。
そういった新しい時代の家族・家庭のありかたにまつわる課題を、皮肉まじりに描いた歌である・・・そんな解釈もできるかもしれません。
こうした歌詞のとらえ方は今までしたことがなかったですが、なかなか説得力がありますね~。深い! 「うーむ」とうならされました。