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電子書籍に踏み出せないあなたに・・・ 『kindle 新・読書術』 by 武井一巳

私ははっきり言って本マニアです。

本をどんどん買ううえに、一度買った本には愛着があって捨てられません。

その結果、家には蔵書が増えるばかりで、このままのペースで数年たったら、狭い我が家には収まりきらなくなりそうです。

あるいは、うちはチャチな作りのアパートなので、床が抜けるのが先かもしれません(笑)

そんな私は、電子書籍にたいへん興味がありました。一番の理由は、なんといっても本を置くスペースがなくてすむからです。また、新しいものはとりあえず試したいというミーハー根性の持ち主なので。

それでも今だに電子書籍に手を出していない一番の理由は何かというと、いま現在、いろいろなファイル形式があってどれが主流になるかわからないためです。

だって、せっかくお金を出して本を買っても、ファイル形式が廃れたら将来読めなくなるリスクがあるわけですよね。

本を所有することに喜びを感じる私には、このリスクはなかなか許容しがたいものがあります。

そんなこんなで、電子書籍のニュースを見ながら迷っている私ですが、今回たいへん気になる本を見つけたので、読んでみました:

 

『Kindle 新 読書術』
著者: 武井一巳
出版: 翔泳社
初版: 2013年1月24日

 

この本は、書籍通販で世界最王手の米アマゾン社が出している電子書籍端末「Kindle(キンドル)」を用いた、新しいタイプの読書の魅力を解いた一冊です。

Kindle固有の機能をどう使うかという解説が多く書かれていますが、この本の主眼はそこではなく、むしろKindle(または電子書籍一般)を試す踏ん切りがつかない人に、何がそんなに面白いかを説明してくれる点にあると思います。

 

私は今まで、「Kindleは、単にデジタルファイルの書籍を表示する端末」というイメージしかありませんでしたが、この本を読んでその認識が甘かったことを痛感しました。

はっきり言って、Kindleがめちゃくちゃ欲しくなってしまいました(笑) なるほどと思ったことを以下で紹介します

(Kindleを使ったことがない私が、また聞きで書いていますので、正確でない記述があるかもしれませんが、あしからず・・・)

 

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著者の武井氏は、「キンドルは単なる電子ブックリーダーではなく、最初から電子書籍のためのプラットフォームそのものだった」 「アマゾンというクラウドを利用するための端末である」 と書いています。

どういうことか?

Amazonのサイトでは、Kindleで読める書籍のデジタルデータが販売されていますが、重要なのは、購入した書籍の情報はAmazonのサーバーで統合管理されているということです。

この結果、一度購入した本は、Kindleの端末だけでなく、パソコン、iPad、iPhone、アンドロイド携帯(無料アプリを入れる必要がありますが)など、およそあらゆるデジタルデバイス上で自在に読むことができるようになります。

家でパソコンまたはKindleで読んだ本の続きを、出先でスマホで読む、なんていうことも自由自在にできます。

購入履歴はサーバーが管理しているので、手元の端末から書籍のデータファイルを削除しても、何度でもAmazonのページからダウンロードし直すことができます。

つまり、物としての本を置くスペースが不要になるのは当然ですが、そもそもデータ自体を常に手元に整えておく必要がなく、必要なときに必要なだけサーバーからダウンロードして読むというかたちで、「書棚のアウトソーシング」が可能になります。

ただ、これだけならまだ大したメリットではないのですが、Kindleがすごいのは、それらの個々のデバイス間で、各種データの同期を取ることができる点です。

Kindleの電子書籍の中には、マーカーをつけたり、ブックマーク(付箋)をつけたり、メモを書きこんだりすることができます。また、好きなところで本を閉じて読書を中断することができます。

これらの情報(マーカー、メモ、中断ページ、etc.)はすべて、Amazonが管理するサーバーのの中にストックされ、すべての端末で共通に参照されるようになります(ネットワーク接続が必要ですが)。

だから、Kindleで特定の書籍を読んで途中で閉じ、続きをスマホで読むという場合、その本を開くとKindleで閉じたページから読書を再開することができます。マーカーやメモなどの情報もことごとく共有されます。

電子書籍にマーカーをつけた場合、その部分だけを一覧表示することができます。私は本を読む時に気に入った場所に付箋をはりまくり、後日Wordにその箇所を手で書き写して要約した読書メモを作っています。しかしこれは大変な手間がかかります。

しかしKindleを使えば、この手間がまったくいらなくなります。ただ単に電子書籍を開いて、マーカーのみ表示してやる。これだけで、私だけの読書メモが簡単に見られるのです。これは私にとってかなり強烈な魅力です。

さらに、ある本を購入した世界中の読者の中で、どの箇所にマーカーをつけた人が何人いるかという情報を見ることもできます。

だから、自分が読んだ本に対して、他人はどこに興味を持っているのかなどを知ることができます。

また、誰かしらがマーカーをつけた部分だけ拾い読みすると、それだけで本の要点をつかめる可能性があります。

これなどは、まさにKindleがクラウドサービスを基本思想としているからこそ実現できた機能と言えるでしょう。

Kindleの機能の多くは楽天のCoboなどの他社端末にも存在すると思いますが、こうしたクラウドを利用した魅力という点では、Kindleがリードしているのが現状のようです。

 

そのほかにいいなと思ったのは、文中にわからない言葉があった場合、国語辞典や英和辞典を起動してその場で単語の意味を調べることができることです。

だから、外国語の本を読む場合にこそ、Kindleが威力を発揮すると著者はいいます。

いままでKindleをはじめとする電子書籍がどんなものか、全くわかっていませんでしたが、思っていた以上に魅力的だなと思いました。

 

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というわけで、この本では著者がKindleの魅力をアツく語り倒しているのですが、従来の書籍と比べたデメリットや注意点についても、きちんと冷静に記述してくれています。

ページをめくる手触りが得られないこと、あちこちページをめくって見比べたり、複数の本を並べて見ることが難しいこと、またKindle端末は小さめなのでマンガや図表の多い書籍は見にくいこと、現時点では品ぞろえが少ないこと(これは時が解決するでしょうが)、などなど。

また、リアル書店にある、思いがけない本との出会いや、書店員さんのこだわりが楽しめるといったメリットが、電子書籍ストアでは得にくいという点もあげています。

 

それから、ちょっと面白いと思ったのは、電子端末ではフォントサイズなど、本の表示設定をユーザーが自由に設定できるということ。

このため、リアル書籍の「ページ」の概念が事実上存在しなくなるというのです。(ここが単にpdf形式のファイルを閲覧する場合と、テキストベースの電子書籍を読む場合との大きな違いです)

これまで書籍の著者や編集者は、その本の内容や出版社の意図などに応じて、フォントサイズやレイアウトをこだわりをもって決めていたそうです。

しかしそうした「見た目の指定」が電子書籍では意味を持たなくなるということになります。これは従来の本の魅力をある点で大きく損なう面がありそうです。

 

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ところで、私が電子書籍に踏み切れない一番の理由、つまり支配的なファイル形式が何になるかわからないという点に関しては、なんとも見通しが立たないのが現状のようです。

いま、電子書籍のファイル書式としては、epubという形式が一般的になりつつあります。

ただこのepub、著作権管理のためのロック(DRM)がかけられるのが一般的ですが、なんと同じepub形式のファイルでも、異なる電子書籍端末用のファイルには異なるロックがかかっているらしいのです。

「それじゃあ、ファイル書式が統一されたことにならないじゃん!」 と思ってしまいますが、tつまり現状では、異なる電子書籍リーダーでは基本的にファイルに互換性がない状態のようです。

いまのところ、各電子書籍リーダーが顧客の囲い込みをしようとテリトリー争いをしているようで、特定の書籍は特定のリーダーでしか読めないという状況がしばらく続きそうです。

だから、Kindle用の電子書籍ファイル(epubではなくmobiという独自形式を採用)をたくさん購入しても、Amazonが倒産したり、電子書籍から撤退したりしたら、購入した本がすべてオジャンになるという可能性が、残念ながら回避できないリスクとしてつきまとうようです。うーむ。

しかし・・・

今回この本を読んで、電子書籍にはそれをはるかに上回るメリットがあるなと感じました

それに、Amazonのような大手が破産するということは、現状ではまず想像できないことですし^^

というわけで、私は多分近いうちに、重い腰をあげて電子書籍リーダー(多分Kindle...)を買うことになると思います。

電子書籍に関心のある方は、こうした本なども参考にして、ここらでひとつマジメに検討してみるのもいいかもしれませんよ。

 

P.S.

著者が指摘するように、電子書籍・オンラインストアと、リアル書籍・リアル書店は、二者択一ではなくてそれぞれ使い分けるべきものなのでしょうね。

私の印象では、絵柄の多い本、辞書的に使用する本、理学書などは、リアル書籍に勝るものはないと思います。

ただ、小説だとか、文章のみの本は、今後はどんどん電子書籍で読んだらいいんじゃないかと思っています。(まだ試してないやつが言うな、っていう感じですが^^)

 

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