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29年間の人生を駆け抜けた不器用な棋士への、愛情あふれる讃歌: 『聖の青春』 by 大崎善生

投稿日:2018年12月19日 更新日:

今日は本当に久しぶりに、ノンフィクション作品を読み終えました。

『聖(さとし)の青春』という本です。

 

『聖の青春』
著者: 大崎善生
出版: 角川書店
発売日: 2015/6/20(角川文庫版)

 

この作品が世に出たのは2000年とかなり前ですが、2016年に入って松山ケンイチ主演の映画として公開されて話題になったので、ご存じの方もいるかもしれませんね。

私は、恥ずかしながら映画が公開されるまで、この小説のことも、村山聖という棋士のことも全く知りませんでした。

映画の公開にあわせて放送されたテレビの特番か何かで、初めて彼のことを知りました(映画そのものは観てません。あしからず・・)

 

裏書によると、この本は ノンフィクション小説 とされています。

はて、どういうことでしょうか?

単に事実を並べたドキュメンタリー(私は最初、そういう本だと思ってました)とは、ちょっと違いました。

この本は、著者の大崎氏が 自身の聖との想い出や取材した事実に基いて、登場する人々の想いや行動を深い想像と洞察で補いながら、小説的な手法で描かれた物語だったんですね。

 


 

この小説(?)は、難病と闘いながら将棋の名人位を目指して突き進んだものの、タイトルを手にすることなく29歳の若さでこの世を去った棋士、村山聖(さとし)の生涯を描いた物語です。

 

主人公の村山聖は5歳のときに突然高熱に倒れ、ネフローゼという病にかかっていることを伝えられます。

ネフローゼとは腎臓の機能不全の一種で、少しの疲れで熱や合併症を引き起こしやすくなったりする難病で、聖は幼いうちから入退院を繰り返す日々を送ります。

思い通りにならない自分の身体に対する苛立ちをしばしば爆発させ、自分と同世代の幼い命が簡単に失われる現実に明日は我が身とおののき、将来への希望を見失いかける中で、彼が父親から紹介されたのが将棋でした。

以後、「絶対に名人になる!」という想いを旨に聖は昼夜を忘れて将棋の研究に熱中し、やがてプロの門をたたきます。

友でありライバルである棋士たちと交流を深めながら、大好きな将棋に全力を注ぎ込み、将棋界の最上位のクラスまで昇りつめた聖ですが、そんな彼を繰り返し病魔が遅いつづけます。そして・・・。

 


 

この「聖の青春」ですごく良かったところは、

聖やそれを取り巻く人々の行動、発言、心理描写が、とても自然で生々しい点です。

小説とは言いながらも、著者の変な自己主張や、盛り上げんがための脚色と思われる部分が無くって、あらゆる描写に

「このとき聖はきっとそう感じたに違いない」

「これこそが事実に違いない」

と思わせるだけの迫真のリアリティがあります。

これは、将棋雑誌の編集長として 村山聖という人間の苦闘を すぐそばから見つめて続けた著者だからこそできたことではないでしょうか。

 

そしてもう1つ 感動的だったのは、小説全編にわたって感じられる、著者が聖たちに向けるあたたかい目線です。

聖も師匠の森伸雄も、決して「イケメン」「デキる男」「スマートな人間」と呼ばれるタイプのわかりやすい魅力を持つ人物ではありません。むしろ、どちらかと言うと敬遠されやすいようなタイプかもしれません。

たとえば聖は服装に無頓着で、風呂にもなかなか入らず、部屋はいつも汚い。対局料の入った封筒でさえ、本やごみの間に無造作に放っておかれているというありさまです。頑固で、人の考えに合わせたり、当意即妙のやり取りをすることが苦手です。

そんな聖の、不器用だけど飾らない率直さ、純粋さ、時折みせる愛らしさ、常に死を意識して生きる必死さ・・・そうしたひと言ではいいがたい魅力を丹念に描く著者の、聖への深い共感、愛情、敬意に胸をうたれました。

 

限りある命を生きるとはどういうことか? 何かに人生をかけるとはどういうことか? そうしたことを考えたり思い悩んだりしている方に、ぜひおすすめしたい一冊です。

将棋界という特殊な世界の事情や 棋士たちの生き様を、一般人にわかりやすく伝えてくれるという点でも、とても面白い作品だと思いますよ。

 

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