新米パパの小さな発見手帳

新米パパ&電子技術者のネリノが、子育て、音楽、読書を中心に、日々の発見をつづるブログ。コメント大歓迎!

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「日本の(偽)ベートーヴェン騒動」の予言本?

      2015/07/06

何度も書いているとおり、私は電子書籍を愛用しています。もともと本が好きで年間100冊くらい買っている私ですが、最近は買う本の8~9割が電子版という感じです。

AmazonのKindleや 楽天のKoboといった、大手電子書籍サービスを使っている方はご存じだと思いますが、電子書籍の中には100円や200円などのとても安い価格で売られている短い本も、実はたくさんあります。

その中には、個人が作成したハンドメイドの電子書籍もありますが、雑誌の一部分(特集記事だけ、とか)を抜粋したダイジェスト版というのも意外に多いです。

 

さて、私が主に使っているAmazonのWebサイトでは、 電子書籍の売上ランキングが日々公開されていますが、 上位にはたいてい期間限定で特売になっている本や、先ほど書いたような短くで安い電子書籍が入っています。

そのAmazonの電子書籍ランキングで、ここ1週間ほど、1位や2位を行ったり来たりしている電子書籍があります。

それがこちらです:

 


「全聾の天才作曲家」佐村河内守は本物か (新潮45eBooklet)
野口剛夫:著
新潮社

 

ハイ、いまやクラシックに興味のない人のあいだでもすっかり話題になっている、佐村河内守(さむらごうち・まもる)氏に関するものでございます^^

 

佐村河内氏に関しては、ニュースやワイドショーでも大騒動になっているので知っている方が多いと思いますけど、一応、知らない方向けにひと言解説をしておきます。

佐村河内守という人物はクラシック(現代音楽)の作曲家です。聴力を完全に失うという作曲家として致命的なハンディキャップを背負い、さらに原因不明の重い病に苦しめられていました。

その、渾身の思いで曲を産み出す様子が、NHKのスペシャル番組で放送されたのをきっかけに話題沸騰。「現代のベートーヴェン」というキャッチーな呼び名がつけられたこともあって、代表作『交響曲第一番 Hiroshima』は、クラシックのCDアルバムとしてで異例の10万枚を超える大ヒットを記録しました。

広島の名誉市民賞を授与され、演奏会は大反響。映画音楽も担当するなど、まさに音楽界の時の人となった佐村河内氏。

・・・ところが! 今月に入って、驚きの事実が発覚しました。実は佐村河内氏が作ったとされた曲はほぼすべて、他人(桐朋学園大学の非常勤講師である新垣隆氏)が作曲したものであることが、新垣氏自身の口から暴露されたんです。

佐村河内氏は作りたい曲の雰囲気を伝える程度のことしかしていなかったそうです。おまけに、全く耳が聴こえないというのが嘘だったことなども発覚。佐村河内氏はいま現在、世の中から非難の集中砲火を浴びている状態です。

 

さて、先ほどの電子書籍は、新潮45という月刊誌に掲載された記事を抜き出して電子書籍化したものです。内容は、佐村河内氏の言動や作品内容から感じる矛盾について、問題提起をするというものです。

この記事がすごいのは、今回の問題が明らかになるより数か月前、2013年の11月に発表されたという点です。事件が発覚してから、「そういえばあの発言が変だった」と後付けする内容ではないんです。

著者の野口氏は、断定的な言い方を極めて慎重に避けていますが、耳が聴こえないことについては確認が望まれる、という言い方で疑問を呈しています。その疑問の根拠としてあげているのが、佐村河内氏が著書の記述です。

野口氏は、佐村河内氏の著書を引用しつつ、

人からの同情を最も忌み嫌うかのような発言をしておきながらも、同時に読者の同情を最大限に得るような記述がなされている

と指摘し、

そこに看過できない矛盾を感じるので、この本に書いてあること全ての信ぴょう性まで疑いたくなってしまうのだ

と書いています。

また、作品自体の内容についても

終始どこか作り物、借り物の感じがつきまとっている

主張の一貫性・真実性が乏しく

虚心に聴いて受ける印象や感動は、既に指摘したような矛盾をはらんでいるあの著書から受けるそれと似ているのだ

と手厳しいです。

「現代のベートーヴェン」のイメージに安易に便乗しているように見えるマスコミや本人に対する不信感を示すとともに、ゴーストライター問題の可能性をほのめかしているように読めます。

 

結果として、この記事で書かれていた疑問点は、大きな問題として顕在化することになったのでした。

こうした記事は、障害を持つ方への不当な批判、成功者へのやっかみと取られるリスクが高く、発表するのに勇気がいったことだろうと思います。

それでも、なるべく慎重な物言いを保ちつつ(断定や罵倒をせず)、かつ疑問に思ったことをきちんと発言した著者の姿勢には、素直に敬意を表したいと思います。

とても短い電子書籍ですが、関心のある方はどうぞ(100円です)

 

ところで、実は私も佐村河内氏を取り上げたNHKの番組を、以前に見たことがあるんですよ。

真っ暗な部屋のすみに座り込み、頭をゴツンゴツンと壁にぶつけながら、何とか曲をひねり出そうと苦悶する彼の姿は、かなりショッキングでした。

また私は『交響曲第一番』のCDは未聴ですが、『シャコンヌ~佐村河内守弦楽作品集』というCDは聴いたことがあるんですよ。これがとにかく重くて暗くて難解で、何がいいのか私には全くわからなかったのですが(こらこら)、番組で見た彼の生き様と非常にシンクロするように感じられて、強く印象には残ったものでした。

佐村河内現象に多少なりとも巻き込まれた私にとって、このニュースは他人事ではありません。

 

法律のことはよくわかりませんが、このゴーストライター問題は、刑事罰の対象にならないのかもしれません。

芸能人の著書にも、プロのライターが代筆するケースが多いようですが、刑事罰を受けたという話は聞いたことがないですから。

それでも、明らかに彼自身が曲を書いたかのように振る舞っておきながら そうじゃありませんでしたというのは、心情的に受け入れられませんね。しかもその「ウソ」が明らかに商売上の利益につながっていたわけですから。彼の生き様に衝撃を受けた分、「だまされた」という気持ちも大きいです。

もっとも、彼が全ろうではないにせよ、重大なハンディキャップを負っているのは事実でしょう。これまでの人生で、生きづらさや苦しさを味わうことも多かったのでは思います。

百歩譲って同情的な憶測をすると、助けを差しのべてくれる人も環境もなく、本当にどうしようもないところまで追い込まれて、止む無くやってしまった・・・ということなのかもしれません。

いずれにしろ、佐村河内氏には真実とそして本心を、きちんと説明してほしいと願うばかりです。

 

余談ですが、奥さんがワイドショーで仕入れた情報(笑)によると、佐村河内氏のCDの発売元がCDの回収を進めているそうですが、なかなか販売店から回収できないそうです。

というのも、これだけニュースになってしまったため、かえって店の在庫のCDが売れるようになってしまったためだから、だそうです。なんとも皮肉ですね。

こういうのも「炎上マーケティング」の一種と言えるんでしょうか??

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